十字架

鈴音

十字架

 ある日、私は罪を犯した。そして、一生消えない十字架を抱えた。その十字架は重くて重くて押しつぶされそうだった。泣くことと懺悔することしかできない。私の罪は「人を思いやる心がなかった」ことだ。

 誰もが石を投げる。「お前は愚かだ。」「お前は何も見えていない。」「お前の五感はおかしい。」「脳みそがないのか。」色んな声が聞こえる。投げつけられた石が罪悪感という感情でさらに痛くなる。あちこちボロボロになった。許しを請いたかったけれど、それは自分が許さなかった。

 その時、誰かが十字架の一部を折った。「私も背負うよ。」と言って。私はさらに泣いた。一部はなくなったけど重さは変わらなかった。辛さも何もかも。でも、誰かが一緒に背負ってくれているという事実だけは確かだった。私はまだ「ありがとう。」と言えない。でもいつか言える日を信じて今日もまた十字架を背負い続けるのだ。

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十字架 鈴音 @suzune_arashi

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