優しい風とともに歩く日々

雨音|言葉を紡ぐ人

第1話 灰色の毎日

朝の6時30分。目覚まし時計の音で、私は目を覚ました。

天井を見つめながら、ため息をついた。また月曜日が来た。また一週間が始まる。26歳のOL・由美にとって、朝は起こる度に小さな戦いだった。

ベッドから起き上がり、スマートフォンを手に取った。SNSには、友人たちの楽しそうな写真が次々と流れてきた。週末のデート、新しい洋服、誰かとの笑顔。私の週末は、布団の中で過ごすことがほとんどだった。

会社に着くと、上司に呼ばれた。

「昨日のプレゼン資料、やり直してくれ。クライアント側から修正指示が来た」

「かしこまりました」

深く何も考えず、返事をした。同じことの繰り返し。修正、確認、また修正。その中で、いつの間にか私は何かを失ってしまっていた。何を失ったのかも、わからないままに。

昼休憩も、ランチを一人で食べた。隣の席の同僚たちは、楽しそうに談笑していた。私は、その輪に入る勇気がなかった。

「あ、由美さん。一緒に行きます?」

声をかけてくれたのは、新入社員の椎名だった。

「大丈夫。先に行って」

そう返して、私は外の公園のベンチに座った。仕事のことを考えていたわけではない。何も考えていなかった。ただ、そこに座っていた。

帰宅は夜の9時。家に着いて、シャワーを浴びて、ベッドに倒れ込む。明日も同じ日が来るんだろう。そんなことを考えながら、私は眠った。

その毎日が、もう半年も続いていた。

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