第34話
目を覚ますと、そこは王の間だった。
隣にはチコが座っており、穏やかな表情で俺を見つめていた。
「チコ……もう大丈夫なのか?」
「それはこっちの台詞です、ヨーイチ様。急に倒れられたので本当に驚きました」
「ごめん」
「いいえ、それほど必死になって薬の材料を取ってきてくれたということですから。わたしは、嬉しくてたまりません」
「チコ……」
俺はベッドの上に座りなおして、チコの手を握った。
「はい……」
「俺の正妻になってくれ」
「ほ、ほんとうに、わたしでいいのですか?」
「君しかいないよ」
「……つつしんで、お受けいたします」
「チコ!」
正妻への条件は、はじめてのまぐわいをすること。
俺はチコを抱きしめてベッドに押し倒し、いままさにーーーーというところで、視線に気づいた。
王の間の入口をみると、見知った面々がこちらを凝視していた。
「なにしてるんだお前ら!」
俺がそういうと、彼女たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「うふふ、みんな、ヨーイチ様が大好きなんですよ」
「まったく……」
「さ、ヨーイチ様……こちらへ」
そういって、チコは俺の服の裾を引っ張ったのだった。
それから七日後。
一日の中で太陽がもっとも長く空に昇ると言われているその日に、俺たちは結婚式を上げた。
ナハラートトの広場には大勢の娘たちが集まった。
俺は頭に色鮮やかな羽飾りを乗せ、上半身に塗料で紋様を描き、腰には連なる葉を巻いている。
これがナハラートトの結婚式での正装なのだそうだ。
隣にいるチコもまた、頭に羽飾りを乗せ、体中に紋様を描いている。
俺たちは大衆の視線を一身に浴びながら、見つめ合った。
「ここまで、大変だった」
「うふふ、本当に大変なのはこれからですよ」
「どういうことだ?」
「それはですね……」
チコは俺の首に腕を回してきた。
「正妻が決まれば、子作りが解禁されるのです。結婚式はいわば解禁日。ここにいいるすべての娘たちが、こぞってヨーイチ様の体を求めるのです」
「へ……? え、いま?」
「いまです。結婚式とはいわば、大乱〇パーティーなのです」
「ちょ、ちょっとまって! それはさすがにーーーー」
「観念してください、ヨーイチ様」
ちゅっ。
チコの柔らかい唇が俺の唇に触れたその瞬間。
それまで穏やかな表情で見守っていた娘たちの表情が一気に獲物を見つけたハンターのそれとなった。
百名を超える娘たちが濁流のように押し寄せてくる。
俺はチコを抱きかかえ、すぐに逃げ出した。
「あー! ヨーイチ様、どこにいくのー!」
「ヨーイチ様、ボクと子作りしてー」
「ようやく男って奴を味わえるんだ! 観念しな、ヨーイチ様ー!」
ナージャたちが後ろで喚いているが、俺は止まらない。
「悪いが俺たちはこのままハネムーンに行かせてもらう! じゃあなみんなー!」
「うふふ、ヨーイチ様。がんばってくださいね」
腕の中でチコが微笑む。
旧石器風の異世界で、俺はまだまだラブコメを諦めない。
貞操観念が逆転した旧石器時代風異世界で、メカクレ美少女とラブコメする話 クッキー @jpoyo
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