第2話
「そ、そんなこと急にいわれても!」
正直、俺はいまにも泣き出しそうだった。なんならちびりそうだったし、体中の液体という液体を放出しかねない状態だった。
けれど震える足でなんとか踏ん張り、老婆と会話していたのだった。
「戸惑うのはわかる! しかしこれは召喚された
老婆は有無を言わせない口調だった。
この村に滞在する以上って、滞在するほかない。こんな着の身着のままの状態でジャングルにでも放り出されてみろ。秒で野獣の餌だ。
俺が沈黙していることを肯定と受け取ったのか、老婆はにやりと口角を釣り上げた。
「さらに村にはもう一つの掟がある! それは正妻を決めることじゃ!」
「せ、正妻?」
老婆は「うむ」と頷いた。
「この集落の王となるお主の妃のことじゃ。いわば女王である。それは実質的なナハラートトの権力者を意味する。お主にはその人物を、この99人の中から選定してもらう」
「ど、どうやってそんなことを決めろと!?」
「決め方はお主に任せる! 顔が気に入ったでもヨシ! 腕っぷしの強さでもヨシ! 愛嬌が気に入ったでもヨシ! お主が最も優れていると感じた娘を選ぶがよい! ……まあ、わしとしてはやはり武芸に秀でた者を娶るのがよいと思うがのう」
ふぇっふぇっふぇ、と老婆はいやらしく笑った。
腕っぷしだの武芸だのって、そりゃ密林の中でウホウホやってる連中ならそれが魅力的なんだろうけどさ。
俺は青春ラブコメを期待してたんだよ!
それがなんでアマゾネスに献上された男娼みたいなことになってんの!?
「まぁまぁ、ゆっくりと決めるがよい。ちなみに正妻となる条件は初めての
「ま、まぐわい……」
デデン! と太鼓が叩かれた。
いやそこ別にそんな強調しなくていいから。
「さて、それではー! うーたーげーじゃー!」
老婆は両手を振り上げて叫んだ。
彼女に呼応するかの如く、太鼓が打ち鳴らされる。
いったい俺はどうなってしまうのだろう。
俺はその場に座らされ、頭の上に大きな羽飾りを乗せられた。
それから目の前にどんどん食事が運ばれてくる。
巨大な葉っぱの上に直で乗せられた豚っぽい生き物の丸焼きや、木の実に果物などとにかくたくさんだ。
あっという間に俺の目の前は食事で埋め尽くされた。
「ささ、ヨーイチ様。たんとお召し上がりください」
老婆はそういってにこにこ笑っていた。
「お召し上がりと言われても……」
あんまり気が進まない。
そりゃそうだ。食品衛生法で守られている現代っ子の俺が、こんなどんな調理をしたかもわからない食事を口にするのはなかなか勇気が必要だ。
俺が並べられた食事を前に呆然としていると、老婆が指を鳴らした。
「ほほう、さてはヨーイチ様はさっそく村娘を吟味したいと見える!」
「ええ!? いや、そういうわけでは……」
「こんなこともあろうかと、先んじてヨーイチ様の接待をする者を決めておいたのじゃ。我らナハラートトが誇る二大戦士であり、ヨーイチ様の正妻となる器を充分に持つ二人じゃ。きなさい、ナージャ! クー!」
老婆が名を呼ぶと、正面奥の
一人は赤毛のポニーテール。やや釣り目がちな赤い瞳を持っており、肌は褐色に焼けている。服装、といっていいのかわからないけど、体に纏っているのは胸と腰回りを覆い隠す葉っぱだけ。体には灰色の模様が随所に塗られており、なんていうか活発そうな感じだ。
もう一人は青い髪の女の子。髪は短めで右側でまとめている。いわゆるサイドポニーというやつだ。服装は赤い髪の子に比べてまともで、灰色の布の服に深緑色のスカーフを巻いている。ズボンはショートパンツのようなものを履いていた。
二人の女の子は左右に列をなす太鼓の中央を歩いてきて、俺の前で跪いた。
「戦士ナターシャの娘、ナージャ! ヨーイチ様の接待をさせていただきます!」
先に言葉を発したのは、赤い髪の女の子だった。
この子がナージャか。
「戦士ラーの娘クー。ヨーイチ様の接待をさせていただきます」
それで、この青い髪の女の子がクー。
とりあえず名前はわかった。
それにしても接待ってなにをするんだろう。
というか、この子たちはどうして跪いたまま動かないんだろう。
「ヨーイチ様、許可を出さねば二人は動きませぬぞ」
老婆に耳打ちされ、理解した。
「あ、ああ、うん、いいよ。よろしく……」
俺がそういうと、ナージャとクーが立ち上がり、俺の傍へとやってきた。
「あたしが誠心誠意、接待させてもらうからね、ヨーイチ様」
にこにこと笑みを浮かべながらナージャが俺の右側に座り、腕を絡めてきた。
なんというかそのぉ、当たってるんですけど。胸が。
決して大きいわけではないけど、確かなふくらみがむにゅんむにゅんと俺の理性を破壊しようとしているんだけど。
「ボクも、がんばるから……」
左側に座ったクーも、髪をかき上げながら胸を押し当ててくる。
この子はあまり表情が表に出ないタイプのようだ。無表情なクールビューティーという印象。
それにしてもこの子はずいぶんと豊満というかたわわというか、凄まじい胸の存在感だ。
決して圧迫されているわけではないのに、弾力をもった水のような感触に腕が包まれる。
「「ヨーイチ様、はい! あーん!」」
左右の対極的な美少女からそれぞれ木の実を差し出された。
俺、ちょっとだけ、ちょっとだけだけど、この世界に来てよかったと思い始めているかも。
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