第17話 京都防衛隊

 薄暗い部屋にビジネスチェアに腰を掛けて、モニターを見ながら、電子ゴーグルを装着している男性がいた。


「とりあえず、休憩でもするか……」


 電子ゴーグルを外して、眼鏡を掛けた。

 電子ゴーグルは様々な機能が付いる影響で重量が重い為、使うだけで疲れてしまう。

 出入口近くのボタンを押すと、ドアが横にスライドして、開いた。


「それで……さぁ、また忍者を取り逃したらしいな?」


 出入口のすぐ側に、知り合いの男性が壁にもたれかかりながら話しかけてきた。

 茶色いコートに帽子、革手袋をしている。


「そういう事になるが、今回は面白い事が起きた。なんだと思う? マイケル?」

「あのなぁ、マイケルじゃない。そんなことよりも、何が起きた。なんだか騒がしいから、お前に直接聞きに来た」

「休憩にしようと思ったんだけどね……まぁいいや」


 男性は部屋の中にはいると、帽子を外して近くの棚に腰を掛けた。ちなみにこの男性はスキンヘッドだ。

 私は座りながら、眼鏡を触った。


「透明人間が忍者の攻撃を止めて、吹っ飛ばした」

「すまん、意味がわからない」


 マイケルは大袈裟に手を横にヒラヒラとジェスチャーした。

 

「まぁ、実際は透明人間じゃなくて、少女らしいだけどね」

「なおさら意味がわかないんだが……」


 私はキーボードを叩いて、監視カメラの映像を表示した。


「これを見てくれ」


 モニターには忍者が金髪の女性の首を切った後に、隣の何も無いところに攻撃動作をした時、忍者の姿が監視カメラから見えなくなる。次現れた時は吹っ飛ばされたという、謎の映像が写っていた。


「なかなか、興味深い状況だな」


 マイケルは手を顎に当てながら言った。


「そして、これが周囲にいたロボットの映像になる」

「同じだな……だが、何故、少女だとわかった?」

「周囲にいた客に聞いたところ、実は肉眼だと、普通に見えているらしいんだよ」

「つまり、透明人間ではないということか」

「ああ、予想になるけど、電子機器を通して見ると事で、ジャミングが働いて、見えなくなっている可能性がある」

「なるほど、しかも……映像を見た感じだと、触れたものまで、効果が出ているのか……」

「これをみてくれ」


 モニター横の空中に、ウィンドウを表示させた。

 ウィンドウにはその日、その時間の位置情報が表示されている。


「まず、少女の位置情報は表示されていなく、忍者の場合、少女に触れた時、位置情報が表示されなくなった」

「つまり、電子機器を通して見ると、姿が見えないし、位置情報も役に立たないという事か、こんな技術を作れる人物なんて限られるからな……例えば支配者とかな」

「私もそう思うよ……それと」

「まだ、あるのか?」

「これ、なんだと思う?」


 監視カメラに写っている金髪の女性を指さした。


「なにって、金髪の可愛らしい女の子にしか見えないが、少女の知り合いか? いやその質問の問い方から考えると……でも血が出てるしな……」

「ロボットだよ」

「はぁー、これがロボットか……信じられないが、何故分かった?」

「この後、監視カメラが不具合を起こすんだが、その時に金髪の女性の死体が無くなっていたから、気になって調べたら存在しない人物だった。そして、この写真を見てくれ」


 周囲にいたロボットが写した映像の中で、金髪の女性の死体がよく見える映像を切り抜いて、拡大したものだ。


「確かに、中身がロボットって感じだな」


 一瞬だけみたら、人間に見えるが、よく見ると、鉄やらコードみたいなものがあり、違和感に気づくはずだ。


「ロボットの癖に血を出すとは気味が悪いな」

「他の監視カメラを見たけど、ロボットには見えない程に、動きは自然だったね」

「じゃあ、やっぱり、支配者絡みか……。少女と金髪の女の子の関係性はわかるか? 近くにいたんだろう?」

「それが……よく分からないんだ、監視カメラを見た感じ、少女と男性がいるところに、金髪の女性が勝手に付いて行っていた感じの雰囲気があった」

「お前、ここ最近の監視カメラ全部見たのか?」

「いや、2人が京都に入ってきて、進むんでいるところを監視カメラで確認しただけだよ」

「というか、男性って誰だよ。そいつは監視カメラに映っていたのか」


 眼鏡の男は新しいウィンドウに男性の情報を広げた。


「普通に写っていたよ。松永浩介、元レイブンシャフトに所属していて、必殺技で多くの相手を倒して、功績をあげていたみたいだね。しかし、最近必殺技が使えなくなって、評判が落ちたみたいだね」

「いつから行動してると把握できたか?」

「それが、謎なんだ。調べただけだと情報は拾えなかった」

「なるほど」


 ウィンドウをスライドして、別の画面に切り替える。


「あの忍者と交戦して、追い払うという事もしていたみたいだ。並の人間では無いことは確か、そして、日本人だよ」

「へー、日本人か珍しいな」

「透明人間の方は全く情報を拾えなかったから、男性の行動について調べたら、京都に入る時に、リーアという貴族と入った事を確認が出来たんだ。つまり、透明人間はリーアという貴族の可能性が高い」


 映像を切り替える。そこには車の写真が乗っている。


「このブランドはUフォースか、支配者のところのやつだよな」

「ああ、この車で京都が完全に封鎖される前にどっか行ったみたいなんだ」

「なるほどな、ここからは俺が持ってきた新情報があるんだが、聞きたいか?」

「本当か?」

「その前に、この部屋を防音仕様にしてくれないか? あまり他の人には聞かれたくない」

「了解〜防音にしておくよ」


 私は端末を操作して、防音仕様に変えた。


「その前に、これらの情報は他の人にどれくらい教えているんだ?」

「実はまだあまり話していいないんだ。ずっと籠って居たからね。最初に言った、透明人間が忍者を攻撃したくらいだな」

「なるほど……」


 男性は立ち上がって、腰にあるホルスターに手をかけた。


「何をしている……?」


 私は危機を感じて、電子ゴーグルを急いで被った。

 

「防御プロトコル起動!!」


 ドンッと銃撃音が響く、その後カンッ、バチバチという音が聞こえてきた。

 音がした方を見ると、私の大型端末が撃たれていた。しかし、問題ないはずだ。銃撃程度で、壊れるものではない。


「やれやれ、何がしたいんだ?」

「画面を見てみろ」

「ん? ーーこれはッ」


 画面にはネズミみたいなキャラが画面上で暴れて、パクパクは食べ始めた。


「まさか、データブレイカーか!?」


 知らない人がみたら、ただの面白映像にしか見えないがこれは、電子ウィルスだ。端末にあるデータだけでなく、消すデータを区別して、ウェブ上のデータすらも、どこまでも破壊して、消してしまうという、都市伝説と思われていた恐ろしいものだ。

 しかも、この男、ハッキングをしたりするのでなく、銃弾を端末に撃っただけで、電子ウィルスを実行した。


「なんだその銃弾は!?」

「えーと、だな。お前は知りすぎたってやつだな」


 スキンヘッドの男性は私に拳銃を向けながら言った。

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