音が標した輝きに

サクラナギサ

プロローグ

第0話 SignPØst、はじまりの音色

音が鳴る。


ギターの弦が空気を震わせるたびに、私たちはそこに立っていた。


SignPØst。


華咲ヶ丘高校で私たち5人が組んでいるバンドの名前。


“道しるべ”とか、”道標”みたいな意味。



だけど、私たちの歩いた道は、いつだって迷いばかりだった。



ギターボーカルは小林 茜。


光そのものみたいな女の子。私の幼馴染。


リードギターは私、大橋 つぐ。


茜の隣で、ずっと音を探していた。


ベースの井上 英二は、文句ばっかりだけど実力はあるタイプ。


ドラムの大森 大智は、感情は全く表に出ないけど、心臓に響く音で語る。


そしてキーボードの塚本 まゆ。


一見完璧に見えて、心の奥に深い傷を抱えていた。



文化祭で出会った音が、すべての始まりだった。



そこから私たちは、まるで出口のない迷路みたいにぶつかり、


離れそうになり、また音で繋がった。


この物語は、そんな私たちの、結成までの道のり。


青春って呼ばれるには少し泥臭くて、


でも確かに、私たちだけの音だった。



ただの青春群像劇?



別にそれだって構わない。


誰かの戯言に足を止めるようなバンドじゃない。



それが、私たちのSignPØst。



少し、振り返ってみよう。


あの、すべてが始まった日のことを。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る