潮騒の星

sui

潮騒の星

夕暮れの浜辺に、少年はひとつの光る欠片を見つけた。

それは貝殻でも、ガラスでもなく、

まるで空から落ちてきた星のかけらのようだった。


指先で触れると、欠片は震えるように光り、

どこからともなく声がした。


「見つけてくれて、ありがとう。」


声は光の中から響いていた。


「私は空から落ちた星。

 夜の歌を失くして、帰れなくなってしまったの。」


少年はしばらく考えて、静かにうなずいた。

「じゃあ、ぼくが探してあげる。君の歌を。」


その夜、少年は海辺を歩きながら、欠片を胸に抱いた。

波の音が寄せては返し、

その合間に、低く透き通るような旋律が聞こえた気がした。


それは潮風と混じり、少年の鼓動と重なって、

少しずつ空へ昇っていくようだった。


やがて星のかけらはふわりと浮かび、

青白い光の尾を引いて、空へと帰っていった。


少年の掌には、温かな余韻だけが残った。


翌朝、空にはひとつ、昨日までなかった小さな星が光っていた。

それはまるで、誰かの優しさが形になったように見えた。

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潮騒の星 sui @uni003

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