第3話 画面の向こうの神への質問タイム

 俺達は四方に座っていたけれど、テレビの画面が見える位置に椅子を移動させてから、俺がテレビにスイッチが無いか確認を行う。


「うーん、スイッチはない感じだな……呼べば映るのか? お~い、神様」


 すると画面が映り、強面の男が映し出される。


『落ち着くことはできたようだな』


 俺も椅子に座り直して、質問をぶつけても良いのか聞くと、まずは転生する異世界について軽く説明をしようと言われた。


 桜花さんがメモしているが、強面の男の説明によると1つの帝国の中に力を持った諸侯が乱立しているような、緩やかな繋がりを持つ帝国の中に転生させるらしい。


 その世界には魔法や不思議な力や魔物といった生物が存在し、それを討伐する冒険者という職業も存在するとのこと。


『そして転生するに当たりチートを付与しようと思っている。チートに関しての希望はあるか?』


「それに関しては後で決めてもよろしいですか?」


 桜花さんが後回しにしても良いかと聞くと、強面の男は頷いて了承してくれた。


 さてと、質問の時間だ。


 ここは取り決め通り桜花さんが代表して質問してくれる。


「まずは元の世界に戻ることは出来ないのでしょうか。もしくは異世界で条件を達成したら戻るということにはできないですか?」


『残念ながらそれには応えることはできない。そもそも君達の本来の肉体は死んでしまっている。我々神々の力で精神を引き出し、精神を元にした仮初の肉体を与えているに過ぎない』


 やはり、今までの生きてきた肉体と今この空間で動かしている肉体は別々の物だと言うことがわかった。


 精神を元に肉体を再構築しているということなら、確かに実里の口の中の口内炎が治っていた様に、肉体の不都合な部分は治っている健康的な状態となるな。


 ん? ということは空腹にならないのもあくまでここにあるのは精神を形作っている物だから、内臓や消化器官が動いているわけではないってことか? 


 つららちゃんは現世に戻れないと聞いて、少しショックを受けているが、実里が慰めている。


 精神体と言われたけど裸なのには変わりないため、あんまりまじまじ見るのは良くないと思い、直ぐにテレビの強面の男の方を向く。


「質問を続けるけど転生する異世界についての生活水準について聞きたい。現代日本並み?」


『場所によると答えよう。魔法により発展はしているが、貴族が幅を利かせている様な世界だ。地位と金によって生活水準は大きく変わる。しかし魔法が使えるのであれば現代か近代並みの生活を送ることは簡単であろう』


「なるほど……ありがとうございます」


 生活水準は魔法が使えれば現代か近代並み……となると魔法が使えることが最低条件になるのか? 


 桜花さんが直ぐに魔法を使えるようになるにはチートで希望しなければならないのかと質問する。


『魔法を覚えようと思うのであれば書庫を訪れると良い。そこには魔法についての知識が記されている。魔法は肉体ではなく精神に宿ると言っておこう』


 ふむ、そうなると画面に映る神? が今の状態は精神体であるって言っていたから、今の状態でも覚えることができるってことか? 


 不思議空間に居るし、魔法を覚えることができるなら覚えてしまった方が良いだろうな。


 あと書庫という単語が出てきた。


 画面の男の言葉から察するに、この部屋のどれかの扉が書庫に繋がっているってことか? 


 桜花さんは一旦異世界についての質問は止めて、この空間に対しての質問に切り替える。


「この空間だとお腹が空くことが無さそうだけど、食事は必要無いの?」


『いや、精神を回復させるには食事と睡眠が必要になる。食事をしたという事実、何かしらの幸福感、睡眠による精神を休ませる……これを行わないと精神体といえども疲弊してしまう。疲弊を続ければ動けなくなり、その時は強制的に異世界に転生させる』


「でも食事ができる場所なんか無いと思うけど」


『この部屋の扉の1つに台所に続く物がある。そこに食材と調理器具、調理に必要な物が一通り揃っている』


「続けて質問よろしいですか?」


『構わない』


「4方向にある扉の先の場所について教えてください」


『私が映し出されているテレビ画面の先を南、反対側を北とすると、北が台所、東が書庫、南が体育館の様な広い空間、西が浴場となっている』


「精神体なのに浴場?」


『幸福感に関わる。体をお湯で癒やした、体をきれいにしたという概念が精神を回復させる』


「なるほど……」


 とりあえず、扉を開けると転生先に繋がっている……というわけではなく、各部屋に繋がっていることが判明した。


 真面目に桜花さんメモ取っているんだけど、裸なのが時々気になってしまう。


 手であそこを押さえつけたり、深呼吸をして落ち着けるが1回意識してしまうと胸のドキドキが抑えられなくなる。


 まぁ何故か画面の男を見つめると、心のざわめきが収まり、スンってなるんだけど……。


 次に聞くべきことは……チートについてか。


 桜花さんが何か悩んでいるので、俺が代わりに画面の男に聞いてみる。


「チートについて質問です。どんなチートが選べるのか例を出していただけると助かるのですが」


『ふむ、確かにいきなり選べと言われても困るだろうな。何らかの事情で異世界に転生する際にチートとしてよく選ばれるのは鑑定だな。相手の能力が数値でわかるという物であるが……感覚で相手との力量を分からないようでは駄目だと思うというのが神々の間では主流だな』


 異世界転生でお馴染みの鑑定のチートボロクソやんけ……薬草かどうかが一瞬でわかるとか色々使い道がありそうな物だけどな……案外使い道が悪いのか……。


『あとは身体強化や特殊な道具を授かりたいというのを選ぶ者もいるが……正直魔法でどうとでもなったり、道具は赤ん坊の頃は親が所有者になるから貧しい生まれだと大きくなる前に売られてしまう……なんていうのが殆どであるな』


 想像以上にチートに関しては吟味した方が良さそうだ。


 下手なチートは魔法と重複してあんまり効果が無いなんて事がありそうである。


「生まれる種族とかの縛りはあるの?」


 実里が質問をする。


『生まれる種族は選んでもらう。ただ種族によってメリットデメリットが存在するから気をつけるように』


 簡単に種族の説明が行われ、人族、エルフ、ドワーフ、竜人、小人族、魔族、獣人、精霊族の8つの種族が転生先に存在する種族であるらしく、人族はバランス型であり、一番人口が多い、エルフは長命(と言っても人族の倍程度なので200年くらいが寿命)かつ魔法に長けているが、筋力が付きにくい。


 ドワーフはエルフと逆で力強いのだが魔法への適性が低く、竜人は炎系の魔法の適性が高く力強いが手先が不器用だし寒さに弱い、獣人は力が強いが肉体強化系以外の魔法が使えない、小人族は手先が器用で頭が良い、人族と同じくらいの人口がいるが短命の傾向。


 魔族は力が強く、長命で魔法も得意であるが、子供ができにくく、根深い差別が存在する。


 精霊族は高い魔法の素質があるが、言葉を理解できるが馬鹿というそれぞれ特徴があった。


 ただ貴族階級は人族、エルフ、ドワーフ、竜人の4種族が基本占めているとのこと。


「ハーフとかクウォーターとかは可能なのですか?」


 つららちゃんが質問する。


 画面の男はそれは勿論あり得ると答え、ハーフやクウォーターになればなるほど種族の特性が薄まっていき、結局は人族に落ち着いてしまうとも言われた。


 まぁこれもチートと同じく悩むことなので選択は後でにさせてもらう。


 最後に桜花さんがこの空間にはどれぐらい居ても良いのか聞くと、各々が満足するまでは居ても良いが、長く居続けると精神が摩耗していってしまうから数年単位で居続けることはお勧めできないとも言われた。


『過去の転生者は長くても1週間程度で転生していったと言っておこう』


 画面の男はこちらにも神としての政務があるので一度質問は区切ると言われて画面が切れてしまった。


 残された俺達は桜花さんがメモしたことを確認しながらとりあえず各部屋の確認を行うのであった。

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