魔女見習いの女子高生、雪村あかりが、修行のためにやってきた北海道・十勝。
彼女に課せられた魔女としての修行、それは一冊の空白の魔導書を埋めること。
記すのは、新しい魔法の使い方や特別な呪文ばかりではありません。
その魔法をなぜ使ったのか、誰のために使ったのか、そしてどう変わったのかも記します。
「借り物の言葉で書かないこと」
「魔法と、それにつながる心を記すこと」
この二つの条件を守りながら。
本作の魅力は、魔法だけを特別なものとして描かないところにあると思います。
随所で魔女としての成長を確認していく機会はありますが、物語の多くを占めるのは、あかりを中心とした十勝での日々です。
この作品を読んでいると、魔法とは単に不思議な力を使うことではなく、人と人との関わりの中で生まれ、その人の心を映すものなのだと感じます。
お世話になるゲストハウス『麦風』でのお手伝い。
親友のスケート大会の応援。
部活の合宿やイベントで笑い合ったこと。
そして、大失敗してしまった思い出の数々。
それら一つひとつが、あかりにとっての「魔法」の意味を形作っていきます。
そして、もう一つ特徴的なのは、このお話が『あかりの物語』でありながら、『仲間たちの物語』でもあることです。
あかりは主役として一段高いところに立つのではなく、彼女を中心として、その周りにさまざまな仲間たちがいる。
そのため、あかりの成長を追っていると自然と仲間たちの成長も見えてきて、本当に十勝にこういう子たちがいたのではないかと錯覚するような、不思議な世界を感じさせてくれます。
魔女見習いが、一人前の魔女になっていくだけの物語ではありません。
仲間と心を結び、一人の女子高生として進路に悩み、悩む友達には全力で向き合う。
そんな当たり前の女の子が、さまざまな人との出会いを重ねながら歩いていく物語でもあります。
十勝で紡がれていく彼女たちの日々を。
そして、彼女たちがどんな未来へ歩いていくのかを。
ぜひ、ゆっくりと見届けてみてください。