古い写真と新しい未来

雨音|言葉を紡ぐ人

第1話 蔵の中の出会い

実家の整理をしていた時、蔵で古いアルバムを見つけた。

祖母のものらしい。

日焼けした茶色の表紙。

ページをめくると、古い写真がぎっしり詰まっていた。

白黒のもの。

セピア色のもの。

色褪せた色写真。

その全てが、昭和の時代を物語っていた。

その中に、一枚の写真があった。

若い女性が、真っ白なドレスを着ていた。

結婚式の写真だ。

横には、同じ年代の男性がいて、彼女の腕を組んでいた。

二人とも、笑顔だった。

本当に、生き生きとした笑顔だった。

その女性の顔を見つめていたとき、気づいた。

その顔が、私に似ているのだ。

同じ目の形。

同じ口の形。

同じ笑い方。

「これは...」

そのとき、景色が変わった。

蔵が、消えた。

代わりに、そこには結婚式場があった。

チャペル。

ステンドグラス。

白いドレス。

そして、その女性は、確かに、写真と同じ笑顔で、歩いていた。

「え?」

私は何も理解できなかった。

ただ、その場面に、吸い込まれていた。

その女性の視点から、その場面を見ていたのだ。

新郎が待っている。

長い通路。

音楽が流れている。

心臓が高鳴る。

その感覚が、私にも伝わってきた。

そして、新郎と向き合う。

彼の顔を見た時、その女性の心が揺れた。

愛している。

本当に、この人を愛している。

その想いが、私にも流れ込んできた。

その瞬間、景色が消えた。

蔵に戻っていた。

写真は、まだ、私の手に握られていた。

「何が起きたんだ?」

心臓が、早く鼓動していた。

その日、私は誰にも言わず、その写真だけを持ち帰った。

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