私には死神が見える

なにわ

第1話

私には死神が見える。それはとても美しくとてもこの世のものとは思えない。それはいつも私に優しい言葉をかける。だが私は知っている。それは私を連れ去ろうとしている。それは私の部屋のベッドの横にいつも立っている。私はいつもそれと話す。他の人には姿形が見えないらしい。私はとても悲しく思う。なぜこんなにも美しく鮮やかなものが他の人には見えないのか。なぜそれの話をすると人はみんな困ったような顔をするのか。私には解らない。だがしかし、それも常にいいものであるとは限らない。たまに私の身体を乗っ取りなにかをしている。私はその間眠っているからなにをしているか解らない。ただ、なにかをしているという事実だけはわかる。2ヶ月ほど前私の母を名乗る人物が私に会いに来た。ただ私にはそれが何なのか解れない。私にはそれがどす黒く禍々しいものに見えてしまう。そんな時死神は私を乗っ取ってくれた。私が酷く怯えてるからなのか、彼と相反するものなのか私には解らない。ただ彼は私を乗っ取ってくれた。しかし、翌日に見ると彼は生来の鮮やかさを失いまるで空っぽの器のようになっていた。私が話しかけても反応せず私は酷く悲しい気持ちになった。ただ数日もすれば彼の色は戻りまたいつものように話せるようになった。私は毎日会いに来る人に母を名乗るアレともう二度と会いたくないと言ったがその人は困ったような雰囲気をしていた。そして1か月前事件は起こった。母を名乗る女がまた来たのだ。私はその女が非常に怖く、また対峙したくなかった。そんな時死神が私を乗っ取ってくれた。しかし私の意識はそのままだった。突如私の視界には色鮮やかな世界が広がった。何色にも見える白い壁に緑の椅子、外は青く木の葉は瑞々しい緑色をしていた。私は母を名乗る女を見つめた。しかしそれは酷くどす黒い色をし、私は声が出なかった。しかし、死神が話しだした。「もう来ないでと言っているだろ。私はこの子を君たちのような存在から守るためにうまれた新しい存在なんだ。この子は君たちのせいで塞ぎ込んでしまい、今じゃ私とも…いや、なんでもない。ともかく帰ってくれ。」それに対して女はまるで全ての言葉を混ぜ合わせたようなこの世に存在するのかも解らないとても黒い事を言っていた。私には何を言っているかわからず困っていると死神がまた口を開いた。「なぁお医者さん。もうこの子が起きちゃいそうだ。この辺にしといてくれ。」そう言って気づいたらまたいつもの部屋にいた。死神は酷く疲弊しきっていたように見えた。突如私の脳内に記憶が流れ込んだ。そうだ全てを思い出した。

私は死神と共にあの青い空へと飛び出した。

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私には死神が見える なにわ @naniwamk

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