第7話 午後の光
春が来た。
図書館の角の席に、今度は違う人と座っていた。彼の名前は、誠一といった。
「ここ、いい場所だね」
「でしょ?」
彼の手が、私の手を握った。あの日の先輩みたいに。でも、違う感覚だった。
過去ではなく、未来を感じた。
「藍子、聞いてもいい?」
「何ですか?」
「なんで、午後の陽だまりが好きなの?」
その質問に、私は少し考えた。
「この光の中にいると、全部が許される気がするんです。悲しいことも、後悔することも。そのすべてが、ここだと温かく包まれる感じ」
「そっか」
彼は窓の外を見た。
「ここで、いつか君にプロポーズしたいな」
その言葉を聞いたとき、私は初めて気づいた。
秘密の時間は終わった。
過去は過去。それは、私の心に残る大切な思い出だけど、人生のすべてではない。
午後の陽だまりは、私が新しく歩み始めるための場所だったのだ。
「わかりました。待ってます」
彼の手を握り返しながら、私は微笑んだ。
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