第6話  新しい陽だまり

それから、季節は巡った。

図書館には、新しい常連ができた。私に毎回、声をかけてくれる青年。

「いつも同じ席ですね」

彼は優しく微笑んだ。

「はい。ここの陽だまりが好きで」

「わかりますよ。ここ、気持ちいいですよね」

毎日、彼は隣に座った。特に何かあるわけではない。ただ、同じ本を読み、時々会話をする。

「仕事何ですか?」

「出版社で編集をしてます」

「へえ、いいですね。本を作る仕事」

「はい。人生が変わるような物語を、たくさんの人に届けるのが夢なんです」

「それなら、絶対になれますよ。だって、君は本当に素敵だから」

その言葉を聞いたとき、私は三年前の自分を思い出した。

あの日、陽だまりの中で聞いた言葉。それが、どれだけ私を支えてくれたのか。

「ありがとうございます」

心から、そう言えた。

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