第4話 秘密の時間

それからが間違いだった。

彼のメールは続いた。仕事の愚痴。親との関係。そして、時々。

「今、図書館の例の場所に来てる」

返信すると、数時間後に彼からのメール。

「よかった。近くだから行ってもいい?」

こうして、私たちは午後の陽だまりで再び会うようになった。

「これ、駄目なんだよな。わかってるけど」

彼はそう言いながら、毎回来た。

「わかってます」

私も毎回返した。

それでも止められなかった。彼の存在。彼の言葉。彼の優しさ。全部が、欲しかった。

「君の夢、達成できた?」

「編集者になりました。小さな出版社ですけど」

「良かった。君なら絶対になれるって思ってた」

三年前と同じ言葉。その言葉が、心を揺さぶった。

「先輩、やめましょう」

「え?」

「このままだと、二人とも破滅します」

彼は何も言わなかった。ただ、陽だまりに差し込む光が、彼の目を湿らせているのが見えた。

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