第3話 陽だまりでの再会

「元気そうで良かった」

図書館での再会から一週間後、彼からメールが来た。

「今度、コーヒー飲みません?」

理性は反対した。この人と会ってはいけない。でも、心は誰の言葉も聞かなかった。

約束した場所は、大学の近くにある小さなカフェ。懐かしい場所だった。

「ごめん、急に」

彼は少し緊張した表情で言った。

「最近、君のことばっか思い出してて。大丈夫かなって」

「大丈夫ですよ。仕事も充実してますし」

「そっか」

彼は窓の外を見た。夕方の日差しが、彼の横顔を柔らかく照らしていた。

「結婚、近いですか?」

聞いてはいけない質問だとわかっていた。でも、聞かずにはいられなかった。

「来年の春。彼女のお父さんが決めてくれて」

その言葉は、まるで刃物のようだった。

「良かったじゃないですか」

「そうだな。でも...」

彼は言葉を止めた。

「何ですか?」

「君みたいな人と出会えば、人生は違う形になってたんじゃないか。時々、そう思う」

その瞬間、私の目に涙が滲んだ。

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