第五話「秘密の逢瀬と、淀殿の誕生」中編
場所:京の郊外、人目を忍んだ寺の離れ
時間:天正13年(1585年)頃
秘密の連絡網を確立した初が、ついに三姉妹の逢瀬を計画した。場所は、京の郊外にある、人里離れた寺の離れ。初は細心の注意を払い、茶々(淀殿)には厳重な警護の目を欺くよう、江には夫の佐治一成に悟られないよう、再会の書状を送った。
「ああ、心臓が破裂しそうよ、侍女。本当に、本当に大丈夫なの?」
初は、自らの神経質な性格を必死に抑え込みながら、茶々と江の到着を待った。彼女にとって、この逢瀬は命懸けであり、この愛こそが、彼女たちのすべてだった。
そして、闇夜に紛れて、二人の影が姿を現した。
「初!」
「姉様、江!」
三姉妹は、声を押し殺し、抱き合った。再会の喜びは、一瞬にして、それぞれの嫁ぎ先での孤独や不安を吹き飛ばした。
「ああ、やっと会えた……。あなたたちがいないと、息ができないわ。この豪華な城は、私にとって牢獄よ」
茶々が、妹たちの肌に顔を埋めてつぶやいた。淀殿としての重圧は、彼女の体を蝕んでいた。
「寂しかったよ、姉様。私たち、約束を守ってるよ。高次様には、心は渡してない」
初が、涙を流しながら訴える。彼女の心は、ずっとこの日の温もりを求めて渇いていた。
「この日を、どれほど待ったか! こんな窮屈な生活、本当にうんざりだわ。でも、あなたたちに会えば、また闘える」
江は、燃えるような情熱を込めて、茶々と初を抱きしめた。彼女の野心は、この愛によってのみ、満たされていた。
三人は、互いの体を求めるように、着物を脱ぎ捨てた。闇が、彼女たちの秘められた愛を包み込む。この再会は、単なる愛の行為ではない。過酷な現実に抗い、彼女たち自身の「生」を確かめるための、彼女たちだけの秘密の儀式だった。
茶々は、まず初を抱き寄せた。柔らかな肌、震える呼吸。初は、姉の腕の中で甘えるように身を寄せ、その優しさに涙をこぼした。茶々は、その涙を舌でそっと拭い、初に静かな安らぎを与えた。茶々の指先が、初の艶やかな髪を梳き、耳朶に触れる。初は、全身で姉の愛を受け止め、小さく喘いだ。
「あなたたちのすべてが、私を強くする。この愛だけは、誰にも奪わせないわ。この温もりが、私たちの真の居場所よ」
茶々の声は、熱を帯びていた。彼女の唇が、初の首筋にそっと触れ、甘い吐息が交錯する。
次に、茶々は江の強い抱擁を受け止めた。江は、まるで自分の存在を確かめるかのように、激しく、強く、茶々を求めた。二人は、互いの肌を重ね合わせ、髪を撫で、吐息を交わす。茶々の白い指が江の背をなぞり、江の体は応えるように弓なりに反る。互いの体に刻み付けるように、その絆を確認した。江の荒い息遣いが、静かな部屋に響く。
「この愛こそが、私のすべてだ! これが私たちの本当の居場所だ。他の男なんて、どうでもいい! 私たちの体も心も、すべてが姉様たちのものだ!」
江は、茶々の耳元で囁き、その声は官能的な響きを帯びていた。茶々は江の情熱を甘んじて受け入れ、その奥深くへと分け入るように、互いの肌を合わせた。
三人は再び一つになった。茶々が中央で妹たちを抱きしめ、初は姉の胸元に顔を埋め、江は姉の腰にしがみつくように、互いの体温と香りに酔いしれた。互いの柔らかな胸が押し合い、甘い吐息が絡み合う。指先が互いの肌を撫で、秘められた場所を探り合う。肉体的な結びつきを通じて、三姉妹が「一つの魂」であることを再確認した。それは、それぞれの嫁ぎ先での孤独や役割を乗り越えるための、精神的な「合一」を達成する行為だった。彼女たちの体は男のものであっても、魂と欲望のすべてが姉妹のものであることを、互いに深く刻み付けた。
愛の力が満たされた三姉妹は、夜が明ける前に、再び静かに別れた。肌に残る熱い感触と、心に満たされた愛を胸に、彼女たちはそれぞれの場所へと戻っていく。この秘密の愛こそが、彼女たちの運命を切り開く、最大の武器となることを確信しながら。
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