第16話 人形
こんな時間にすみません。え? ぼくのほうは大丈夫です。あなたこそ……。あ、このお近くのビジホに泊る? そりゃよかった。ぼくは実家が、このあたりなんで、寄って帰ります。
ぼくいま、妻に浮気を疑われているんですよ。
は? ……してませんって(笑)
浮気騒動のきっかけはね、実家じまいなんです。
父が亡くなって、母が高齢者専用住宅に入所しましてね。
実家を片付けようってなって。
兄弟で片づけしてたんです。
そしたら、父の書斎から、日本人形が出てきましてね。
木箱に入った人形で、書付もあったんです。なんかこう……。隠すようにクローゼットの奥から出てきたから、「これ、すごい価値があるんじゃないか⁉」って、古物商に持って行ったんですよ。
そしたら、「古いものだけど、価値があるわけじゃない」って。
拍子抜けですよ。
古物商が言うには、「遊女が客に渡したやつかもしれませんね」って。書付を見て言うんです。「会えないときも私を思って」って渡す遊女がいたらしいんですね。
弟たちは「人形が気持ち悪いから、はした金でもいい。引き取ってくれますか?」って掛け合ったんですが。
なーんか、手放すのが惜しくてね。
持って帰ったんです。
そしたら、次の日から、妻が、「あの人形が気持ち悪い」って。
あんまりにも言うから、仕方なく実家に戻して。
で、ぼくが実家に通っているんです。
……ええ。今日だけじゃなく、毎日通っていますよ。
だって、人形のお世話がいるじゃないですか。
これが結構、手間がかかるんですよねぇ。今日はお酒がいい、明日は果物が食べたいってもう。ワガママ娘で。はは、そういうところがいいんですけどね。
今度は旅行に行きたいらしくて。温泉を探しています。
え? 浮気じゃないですよ。相手は人形ですよ?
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