ふたつの僥倖。


 おじいさんがおむすびを食べようとしたら、うっかり落としてしまいました。

 おむすびはころころころりんと、斜面を転がって、ネズミの穴に入っていきました。

 ここまでは幅広く伝わっている物語のとおりですね。

 しかし、現代基準のシミュレータにかかると――



 知り合いの背中だと思って声をかけたら、まったく別の顔が振り向いてきた感じの話でした。

 省略の美学といいますか、雰囲気を出しながらも、最低限のアレンジで印象をまったく変えてしまう手際に脱帽です。