おむすびころがっても追わないで

猫小路葵

おむすびころがっても追わないで

 むかしむかしあるところに、おじいさんがいました。

 おじいさんは山へ芝刈りにやってきました。

 お昼になったので、家からもってきたおむすびを食べます。

 おじいさんはおむすびを取りだしましたが、うっかり手がすべってしまいました。

 おむすびは山の斜面をころころところがって、木の根もとの穴にころりんと落っこちてしまいました。

 おじいさんは「こまった」と思いました。

 すると、穴の中からなにやら声がします。


「おむすびころりん、おちてきた!」

「おむすびころりん、おちてきた!」


 おじいさんが穴をのぞきこむと、中ではネズミたちがうれしそうに歌っていました。

 みんなでおむすびをお神輿みこしのように担ぎあげています。

 ネズミたちはうすきねを用意して、おむすびでもちつきをはじめました。

 やがておいしそうな餅がつきあがり、ネズミたちは大よろこびで餅をまるめました。

 おじいさんはその様子をもっとよく見ようと身をのりだしました。

 その拍子におじいさんはバランスをくずしてしまい、こんどは自分が穴に落っこちてしまいました。

 ネズミたちはおどろいて、しばし沈黙。

 そのあと「わあ!」と歓声があがりました。


「タンパク質が、おちてきた!」


 逃げて、おじいさん。



 

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