家に……家に!?

「……………」


 勉強会が終わり、校門で綾香を待っていた。

 お手洗いを済ませてから向かうと言われたのでこうして一人彼女を待っているわけだが……ちょっと考えていることがあった。

 それは、今日の勉強会中の綾香の口数が少なかったからだ。


「……阿澄の話をしてからだよな」


 三國先輩の話をして、そこで阿澄のことに発展した。

 その時に綾香の様子に変化があったのは気付いていたけど、そこから極端とは言わないまでも口数が減った。

 一応阿澄はもう綾香に対して悪いことは思っていなくて、むしろ謝れる機会があればとさえ言っていたことも伝えたが……とにかく綾香が来たら詳しく聞こう。


「お待たせ、天斗君」


 そんなこんなで綾香が戻ってきた。

 雰囲気は……いつも通りで安心したが、やっぱりちょっと視線に含みがあるような気がしてならないが……取り敢えず学校から離れよう。

 それからしばらく歩いたところで、俺は話を切り出した。


「なあ綾香」

「なに?」

「……阿澄の話をしてから機嫌悪くなってないか?」

「え? そうかな?」


 首を傾げる綾香だが、表情は全く笑っていない。

 これは……嫉妬かな?

 とはいえ俺が女の子に嫉妬されるような男じゃないんは百も承知……でも綾香との仲の良さを考えれば、おそらくこれは嫉妬してくれていると思って間違いはなさそうだ。


「一応、わだかまりはもうないくらいには話をしたよ。けど本当にそれくらいだし、綾香が心配……まあ気にするようなことは何もないから」

「わ、私は……うん……ごめんね天斗君」

「いや、謝る必要はないから」

「……ずっと気にしてたでしょ? うん……私、天斗君が他の女の子の話をしたのが嫌だった……ごめんね」

「……全然良いって」


 この言い方……俺は、別に鈍感を気取ってるわけじゃない。

 これまでのやり取りもそうだけど、あんな……胸まで触らせてくれる子が俺に対して何も思っているはずがないと考えるような頭もしていない。

 綾香は……あぁもう! 何事も経験が大事だけど、この場合は一体どうすればいいってんだ!


「ね、ねえ天斗君」

「なんだ……?」


 一体考え事を中断し、綾香との会話に集中しよう。

 改めて視線を向けた時に彼女は、既に先ほどまでの雰囲気……機嫌が悪そうな表情は鳴りを潜め、どこか恥ずかし気だ。


「今週なんだけど……私の家、両親が居ないんだ」

「お、おう……」


 こ、これはまさか……!?


「……泊まりに来ない!?」

「……え?」


 ……うん?

 ちょっと待て……今彼女は何と申された? 両親が居ないからってところまではハッキリ聞こえたんだけど、家に来ないかって言ったか……遊びに来るか的な話だよな!?


「遊びに……か」

「泊まりに……だよ?」

「……なんて?」

「だから……泊まりに来てほしいなって」


 泊まり……お泊まりってことぉ!?

 いきなり何を言ってるんだと声を大にしたいところだし、完全に彼女の言葉を受け止められたわけじゃない……でもここで俺の興味心がまた出てきてしまった。

 綾香の胸を触った時と同じ……問題だと分かっていても、女子の家にお泊まり出来るとか……しかも仲良くしている相手ともなれば是非お邪魔してみたいって思っちゃうじゃないか!!


「天斗君は興味ないかな?」

「え……?」

「女の子の家……興味ない? ご飯とか作ってあげるよ?」

「お、女の子の手料理……」

「一緒の部屋で夜は寝たりも……ね?」


 俺は……俺は今、何を聞かされている?

 動揺する俺とは違い、なんでこんなに綾香は楽しそうに俺を誘うことが出来るんだ……?

 彼女がどう思っているのか、俺がどう思っているのか……一旦それは置いておくとして、単純に興味があることを体験してみたいってか……そんな理由で頷いちまうぞ!?


「うちに来たら……またおっぱい触らせてあげるよ?」

「っ……」

「誰も邪魔が入らない場所で……私と天斗君しか居ない場所で……それでどうかな?」

「……………」


 俺は……ただの馬鹿だ。

 こんなことで頷いてしまえば、興味に負けたことはもちろん……綾香の女体に負けてしまったこともバレるのに……更に言えば、そういうことに興味があって断れない人間だってこともバレるのに、それでも俺は頷いてしまった。


「……いいの?」

「いいよ、おいで」

「じゃあ……お邪魔します」


 年頃と言いますか……女の子と過ごせるなら過ごしてみたい。

 そんな欲望を抑えることが出来ず……けれどもやっちまったかなと若干の後悔を滲ませながら俺は、綾香の家に行くことを選んだ。


「女子の家に行くって……何を持って行けばいいんだ?」

「……ぷふっ! 面白いなぁ天斗君」

「笑うなよ! 初めてのことにビビってんだからな!?」


 ケラケラ笑う綾香だが、もう俺は逃げられない道に足を踏み入れた。

 今週の金曜日……学校が終わったら一度家に帰り、それから綾香の家に向かう……まだ数日後のことなのに、今から俺はとてつもないほどドキドキするのだった。


「……綾香の家……か」


 ダメだと分かっているのに、彼女の家で二人っきり……それを想像すると考えてしまうことがある。

 無防備な綾香に手を出しちゃうような……そんなことを。


「……どうなっちまうんだろう」


 取り敢えず……一旦帰って落ち着こう。

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