【2分で読めるシリーズ】第5弾『黒魔女っ子ドクリン🖤』魔法少女パロディ――怠け者こそ、世界を救う⁉︎

いろは

【2分で読めるシリーズ】第5弾『黒魔女っ子ドクリン🖤』常識はひとつじゃない――怠け者こそ、世界を救う⁉︎

「絶対、負けない! そうよ、私は――」


ここは――暗黒の国 ドクラーヤ王国。


ドクラーヤはだらしない人たちばかり。

目覚まし時計なんていらないの。

目覚めた時が1日の始まり。

遅刻は権利。待ち合わせなんてできはしない。

身体も服も汚れてなければ洗わない。

誰も気にしない。それが合理的。


それは自然な事。

だってそれが常識だから。


光の国――シャララ王国は正反対。

スッキリ、掃き掃きはきはき生活をする。

みんなが早起きで、毎朝掃除は欠かせない。

ゴミ・チリ・ホコリは大嫌い。

汚した者は大罪人。一生監獄行きとなる。


お互いの普通が普通じゃない。


またもや今日も恩着せがましい光の国が、このドクラーヤにやってきた。


「行け――ママン戦士ソルジャー!✨

光の加護で、みんなを正しく導いて!」


ママンソルジャーは、白いドレスにフリルのエプロンを付けた女性型ロボットだ。

腰にはスプレーボトル、背中からは香水の香りが漂う。


ホ〜ホホホホ♡ 光の香りを感じるでしょ?


ママンは、笑いながら次々に街の人に襲いかかる。


顔を洗いなさい。

お風呂に入りましょうね。

服を着替えましょう。


汚れた服を脱がし、手から溢れさせた泡で街の人々を包んでいく。


「うわぁぁー!くるな――」

「いやぁ!きれいになんてなりたくない……」


みんなの悲鳴が上がる中、甲高い声が空を割く。


「そこまでよ!――シャボンピンク!」


泡まみれの人々が歓喜の声を上げる。


「あ、あれは――!」

「黒魔女っ子――ドクリン!」


しかし喜びも束の間、泡に侵されて洗脳されていく!


「ドクリンきたわね。でも――もう遅いわ」


「泡でびしょ濡れだ。乾かさないとばい菌が――」

「今すぐ清潔な服に着替えなきゃ……」


シャボンピンクの言う通り、泡を浴びた人々がキビキビと歩き出す。


「――なんて、酷いことを……!」


それを見て、ドクリンの顔が怒りに変わる。


「普通に暮らしてるだけなのに! 誰にも迷惑かけてないのに!」


ドクリンがとんがり帽子を被り直し、燃える瞳で杖を構える。


「……おかしなことを――清潔は美よ。きれいじゃないなんて、それだけで悪。

あなた知ってる? 歯を磨かないと虫歯になるのよ」


――シャリーン✨


シャボンピンクも負けてはいない。

白いマントを翻し、錫杖をクルンクルンと回転させる。

キュルン♡と前に突き出した。


「キレイは正義!菌は悪!平和と健康お守りします!

――シャボンアタック!」


先に仕掛けたのはシャボンピンク。

錫杖からドクリンめがけて泡が飛び出した。


あわてて横に飛ぶ。


「ぎゃー!あわっ……あっぶない!」


ピッカー! キラキラ――✨

立っていた場所が、一瞬でピカピカに磨き上げられた。


ゾッとしたドクリンが、声を上げる。


「ジャムル!」


ドクリンの帽子の中からトカゲがするりと現れる。


「ピンチだね」

「うん、変身よ!」


ジャムルが目を瞑ると、体がドクンドクンと収縮する。

グイーンと伸びて、あっという間に緑色の箒になった。


「――逃がさないわ!」


シャボンピンクが、もう一度錫杖を振る。


シャリーン――✨


ドクリンは箒にまたがると、急いでバッと地を蹴った。

寸前のところで避けられた。代わりに車がピカピカに。


息を吐きながら空中で地上を見渡す。

黒い敷地に輝く白……ドクリンは、眩しさに目をすがめた。


「街をどうにかしなきゃ……!」


顔の前で、円を描くように杖を振る。

そして、その中に息を吹きかけた。


ポポポポポ……


――ポイズンブレス!


それは地上に広がり、街はたちまち元通りになった。

人々は正気に戻り、ママンソルジャーはピシピシと音を立てて壊れる。


「――クリン、変身よ!」


シャボンピンクのマントの中から、白いオウムが羽ばたいた。

背後で、大きく羽を広げる。


バッサ――!


鋭い光と共に、背中で白い翼となった。


シャボンピンクが羽ばたきながら、シャボンアタックを放ち続ける。


「うわっ!ぎゃう……あぶなっ!」


ギリギリでかわすドクリン。

目の前に追いつくと、シャボンの錫杖が振り下ろされる。


ガッツン!


箒――ジャムルが立ち上がり、ドクリンを守った。

ドクリンは一回転をして体勢を整える。

シャボンピンクは肩で息をする。


「悔い改めなさい!――黒魔女っ子ドクリン!」


「シャボンピンクのわからずや!

誰も悪くない――常識はひとつじゃないのよ!」


「――っ?! わからないこと言わないで!

――シャボンスクリューアタッーク!!」


ジャババババ――!!


「きゃ――!」


渦巻いた泡の集合体が、箒共々打ちのめす。

ドクリンと変身の解けたジャムルは分かれて落ちていく。


――ドサッ!


背中に衝撃を感じて、恐る恐る目を開く。

地面に落ちたはずの体は、街の人々によって受け止められていた。


「ドクリン!頑張って!」

「街を守って!お願い!」


期待を宿したその瞳に、勇気が溢れ出す。


「負けない!――そうよ、私は!」


指先で杖をクルリとひと回転。

杖を振り上げ、左肩から右へと弧を描き、

左手を腰に、右手を突き出す。


――ビシッ★


「黒魔女っ子ドクリン!


愛と怠惰を守るため、一瞬だけはフルパワー!

――毒リンビ――ム!!」


ジュバァァァ――!!


紫の発光体が、禍々しい黒い渦と交差しながらシャボンピンクを貫く。


「きゃあぁぁぁ――!」


燃えるような熱さに、シャボンピンクは倒れた。

人々のドクリンコールが街中にとどろく。

照れながらふと見ると、シャボンピンクの姿は消えていた。


 殺さなくて、良かった……。


ドクリンはホッと胸を撫で下ろした。

その時、背後から肩を掴まれる。


「――っ!」


振り向くと、仲間の姿が……。


「サボるん!――遅いわよっ!」

「ごめん……めんどうになっちゃって。そこにいた」


目と鼻の先にあるコーヒーショップを指差す。

一瞬の沈黙。


「さっ、サボる――――ん!!!」


爆笑の渦の中、今日もドクラーヤの平和は保たれた。

しかし、きっとまた、シャララ王国の光の手は伸びてくる。そのときは――


ドクリンたちの出番だ!

いけ――黒魔女っ子! 国民の怠惰を守るんだ!!



次回の、黒魔女っ子ドクリンは――⁉︎

サボるんが1時限から授業参加⁉︎

ウソでしょ――天変地異の前触れかしら。

しかも手を挙げるなんて……何があったの?

焦るドクリン――そのとき!

保健室に、誰かいる⁉︎


次回!黒魔女っ子ドクリン

『やる気のサボるん――第3の仲間』の巻!

お楽しみにね🖤

※ウソです

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【2分で読めるシリーズ】第5弾『黒魔女っ子ドクリン🖤』魔法少女パロディ――怠け者こそ、世界を救う⁉︎ いろは @Irohanihohetochan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ