第17話  王国のその後


フェリシアが隣国で新生活を始め、事業と愛の両立に充実した日々を送っている一方、王国では、アルヴィンとクラリスの没落が加速していた。かつては王太子とその婚約者として華々しく振る舞っていた二人だったが、フェリシアの暴露によって社交界での立場を失い、今やほとんど孤立状態だった。



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アルヴィンの没落


王太子の座を失ったアルヴィンは、かつての特権や権威を完全に失い、次第に表舞台から姿を消すようになった。彼を擁護していた一部の貴族たちも、彼の行動の軽率さと陰謀への関与が明らかになるにつれて次々と離れていった。


「アルヴィン殿下がこんな形で失脚するとは…。我々も判断を誤ったかもしれない。」

かつて彼を支持していた貴族たちは集まり、後悔の念を口にした。


一方、アルヴィン本人はその状況を受け入れることができず、日々苛立ちを募らせていた。


「なぜ誰も私を助けようとしないんだ! 私は王族だぞ!」

アルヴィンは王宮の一室で叫び声を上げたが、その声に耳を傾ける者はほとんどいなかった。彼の地位を取り戻そうとする努力は、かつての仲間たちに無視され、むしろ冷ややかな視線を浴びるだけだった。



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クラリスの孤立


クラリスもまた、かつての社交界での地位を完全に失っていた。平民出身でありながら王太子妃候補となったことで注目を集めた彼女は、陰謀が暴かれたことで信用を失い、誰も彼女に手を差し伸べる者はいなかった。


「あなたが私をこんな目に遭わせたのよ!」

クラリスはアルヴィンに向かって怒りをぶつける日々を送っていた。


「黙れ! お前の無計画な行動が全てを台無しにしたんだ!」

アルヴィンも彼女に対して怒りを返し、二人の関係は完全に崩壊していた。


クラリスは唯一の支えだったアルヴィンとの関係が冷え切ったことで、さらに追い詰められていった。彼女は社交界に復帰しようと何度か試みたが、どの場でも冷たく扱われ、もはやその世界に居場所はなかった。



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フェリシアへの未練


そんな中、アルヴィンは隣国でのフェリシアの成功を耳にする。彼女が事業で成功し、隣国の公爵夫人となるという知らせを聞いた彼は、初めて自分が失ったものの大きさに気付いた。


「フェリシア…あの時、私が彼女を切り捨てたのは間違いだったのかもしれない。」

アルヴィンはそう呟きながら、彼女に手紙を書く決意をした。


手紙には、フェリシアへの謝罪と共に、自分の行動を後悔していること、そして彼女に戻ってきてほしいという願いが記されていた。


「フェリシア、君が隣国で成功していると聞き、君の素晴らしさを改めて実感しています。私は君を深く傷つけ、取り返しのつかない過ちを犯しました。どうか再び私のもとに戻り、この王国で共に新しい未来を築いてほしい。」



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フェリシアの無視


隣国でその手紙を受け取ったフェリシアは、内容を一読すると、ため息をつきながらそれを脇に置いた。彼女の表情には、怒りも悲しみもなく、ただ呆れたような落ち着きがあった。


「今さら何を言っているのかしら。」

フェリシアはそう呟くと、手紙をリヒトに見せた。


「アルヴィンが私に戻ってきてほしいですって。」


リヒトは手紙の内容を読むと、苦笑しながらフェリシアを見つめた。


「彼は、自分が失ったものの大きさにようやく気付いたんだろう。でも、君が彼の元に戻るなんてことは絶対にない。」


フェリシアは静かに頷き、手紙を封筒に戻した。


「もちろんよ。私はもう過去に縛られるつもりはないわ。この手紙も、ただの一通の紙切れね。」


彼女はその手紙を机の引き出しにしまい、それ以上は話題にしなかった。彼女にとって、アルヴィンからの手紙はもはや何の意味も持たないものだった。



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没落した二人の未来


その後、アルヴィンとクラリスは完全に孤立し、王国の誰からも相手にされることはなかった。アルヴィンは王族としての権利を剥奪され、地方の小さな領地に追いやられることとなり、クラリスもその地に留まるよう命じられた。


二人はそこでひっそりと暮らすことを余儀なくされ、かつての栄光を取り戻すことは二度となかった。



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フェリシアの新たな一歩


一方、隣国でのフェリシアの生活はますます充実したものとなっていた。アルヴィンとクラリスがどのような運命を辿ろうとも、彼女の心にはもう何の影響も与えなかった。


「私はもう、過去に囚われる必要はないわ。」

フェリシアはそう静かに呟きながら、新しい未来に向かって歩き出した。


彼女にとって、真実の幸せとは過去を振り返ることではなく、現在と未来を自分の手で切り開くことである。その決意を胸に、フェリシアはリヒトと共に歩む人生を心から楽しんでいた。


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