見える

毎度のごとくの自己紹介をします。俺は有村翔だ。今は学校で一人勉強をしている者だ。休み時間は友達と喋る輩が多いが、俺は大学に本気で進学するために勉強をしなきゃなんだ。まあ友達と話して息抜きするのもいいと思うよ?思うんだけど…学業だけは疎かにしてほしくはないかな。


「…って話なんだよね~」

「だよね~」


女子高生の話か…ちょっとどころじゃないくらい興味がある。

…なんて言ってる暇はない。勉強して少しでも可能性を上げなければ…!


「へいへ~い!君は今日も勉強してはりますな~」

「怪しい感じで来るなよ琉斗…」

「そんなに勉強してたら頭おかしくならないか?」

「むしろ赤点ギリギリのお前が勉強してないこと自体頭がおかしくなりそうなんだが?」

「前日にやりゃ大丈夫だっつーの」

「…どっかの誰かさんと同じこと言ってやがる」


絹川だ!と思った人は正解です。でも絹川に関しては普通に勉強できるほうなんだよな~、ただ勉強に対する意欲が少ないだけで、案外要領はあるのかも。何で俺は絹川と琉斗を比べてんだよ。


「…てかよくあの課題量をこなしたうえで赤点ギリギリになれるな」

「まあ前日にアクセルを全開にしまくってるから、当日に燃料の底が尽きちゃうんだよね」

「バカのペース配分じゃん」


俺はそう琉斗にツッコミを入れながら勉強する。まあ全く集中できていないので早くどこかに行ってほしいのだが…なんて思っているとチャイムが鳴って次の授業が始まろうとしていたのだが、担当の先生が休んでたため自習となった。

…まあもちろんみんな黙々と勉強するわけですよ、進学校なので。


…お?あいつはちゃんと授業受けてるな。


ちなみに、俺は窓際の席に座っており、その窓際から一年生の校舎が見えるようになっていた。この時に見えたのは絹川の姿だが、キチンと机に座って勉強してる…あんな姿を見るなんて何だか新鮮な気分だ。

いつもはちょけている絹川なのだが、授業はまともに受けているなんて…どうして俺の前ではあんな感じなんやら。


…お、よそ見してんな~。いけないぞ?授業はちゃんと受けなきゃ~。


すると絹川は俺の事を見つけたらしく、こちらを見て微笑んできた。微笑み方があれだな…うん、アレ。なんかいたずらを考えてる時の顔だ!なんか察することができた!

…俺は自習中に何よそ見してんだろ、馬鹿らしくなってきた。


すると授業が終わり、次からは通常授業とはなった。


――――――――――


帰り際、俺は絹川に絡まれていた。


「あ、ちょっと前の時間にせんぱいって私のこと見てましたよね?」

「み、見るわけないだろ。自習だ自習」

「へぇ~、まあそういうことにしますね」


…うん、絹川は絶対に分かってる。

俺があの時に絹川のことを見ていたことを…。

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