感悟の聖像

火之元 ノヒト

銀色の檻

 恐怖という猛獣から逃れるため

 私は硝子の城を築いた

 レンガの代わりに論理を積み

 窓には冷徹な因果の鍵をかけた


 ここは安全だ

 予想外の嵐も 不条理な夜も

 すべては計算式の彼方へ消える

 心臓はただのポンプとなり

 涙は単なる塩水へと還元された


 けれど、静寂は次第に耳鳴りに変わる

 何故という問いが円環を描き

 出口のない回廊を 正気なまま彷徨う

 正しすぎる世界には 色も匂いもない


 ふと、指先が触れた壁の冷たさ

 感じた指先の微かな揺らぎ

 それは 論理の綻びか

 それとも 魂が呼吸を思い出そうとする音か


 檻の扉を開ける鍵は

 皮肉にも かつて捨てたはずの

 震えという機能の中にしかない

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