無自覚にもほどがある
玄関のドアを開ける。
ガチャリ…
「あんまり片付いてないけど…どうぞ」
私の言葉を聞いてスタスタと入っていく梨竹さん。
見慣れた家なのにいつもと違うように感じるのは、かわいい後輩がキョロキョロしながらそこに存在しているからだろう。
「美穂さんのお家落ち着きますね!」
無邪気な笑顔をこちらに向けながらベッドに腰掛ける梨竹さん。
(ベッドに梨竹さんが……ごくりっ…)
ダメだダメだ…。邪念を振り払うように頭を振る。
「そ、そう?ならよかった。あ、水飲む?」
いつも通りを演じたつもりだけど、声が少しうわずってしまった。
彼女の目を見ないようにお水の入ったグラスを手渡す。
「ありがとうございます……新歓楽しかったです!」
「梨竹さんが楽しめたなら私も嬉しいよ〜」
「美穂さんお酒強いんですね」
「そうかな?まぁ、お酒で失敗とかはないかも」
…失敗しそうである。
こんなかわいい女の子と飲み会終わりに家に2人っきり……私の理性頑張ってくれ!!
「私、飲みすぎちゃったかもです…」
そう言いながら、後ろに倒れてベッドに寝そべる。本当に酔っているのか頬がピンクに染まっている。
「…かわいいなぁ……」
「ん?美穂さん何か言いましたか?」
「え!?あ、いや、何も言ってないよ…」
「そうですか、酔ってるから幻聴でも聞こえたかなー」
「ははっ、そうかもね」
(あっぶねーー、心の声漏れちゃったよ)
いつもより心が乱れている。
もう脳も思考回路がイカれてしまっているかもしれない。
落ち着けわたし…。
言うことを聞かない心臓を必死に落ち着かせている私を気にもせず、無防備な彼女はさらに私に追い打ちをかける。
「美穂さん…もっとこっちにきて…」
いつもより甘い声。
とろーんとした目で寝そべっている彼女の手が、私の袖をくいっと引っ張る。
あまりの可愛さに、動揺を隠す暇もなく梨竹さんと距離を詰める。
「ど、どうしたの?梨竹さん。いつもより甘えただね…」
「…いやですか?」
「嫌じゃない!…嫌なはずがない」
梨竹さんが不安そうな顔になるから、慌てて否定したら大きな声を出してしまった。
「ふふ…よかったぁ」
嬉しそうな笑みを浮かべて安堵していた。
そのかわいい表情を見て安心していると――
「…美穂さん?」
愛おしい彼女の…綺麗な黒髪の…梨竹さんの頭を撫でていた。
触れたくても、触れてはいけないと思っていた彼女に…気づいたときには触れてしまっていた。
私から彼女に触れることが今までなかったからなのか、梨竹さんは不思議そうに見つめていた。
「あ、ご、ごめん。可愛くてつい…」
もう動揺を隠すことも忘れて、本音を言ってしまった。胸の奥のざわつきは限界を越えようとしている。
梨竹さんはそんなつもりないとわかっているのに。期待したくないのにしてしまう…。
「ふふ、もっと撫でてください…撫でられるのすき」
可愛すぎてこのまま唇にキスを落としてしまいたい。そんなこと…絶対にしてはいけないのに。
理性が壊れようとしている。
壊してきたのは紛れもない、無防備なかわいい後輩だ。
無自覚にもほどがあるよ…梨竹さん。
この夜は、まだ終わりそうにない。
もうあと数センチ……
気を緩めたら私はきっと―――
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