第12話 ネクロ

 目の前の筋骨隆々のゴーレムは、その手に持つ大剣を振り下ろして来た。それをインベントリから取り出した魔剣で防御する。


「これ程早いとは…楽しめそうだ。」


 何時もはボコされる側だからな。今日くらいは此奴相手にストレート勝ちをしても問題無いだろう。俺は直ぐさま背後から無数の刀剣を射出する。その攻撃は、奇しくも大剣で防御された。


「面白そうだ。〈加重斬〉」


 自身の体重を込めた斬撃を放つ加重斬を放つモノの、相手のゴーレムに防御されてしまう。それを予見したかのように腕の部分にインベントリの穴が広がる。


「これで右腕は取った。さて、どうやって来るか…。」


 神剣を射出して見事ゴーレムの右腕を取るに至った。それを見てもなお冷静なゴーレムは左腕で大剣を捻じる様に振るう。そのアンバランスさに多少の苦戦はしたが、翁ほどの強者じゃない。


「もうちょっと楽しみたかったが…お前じゃ無い。さらばだ。」


 ゴーレムの周囲を囲むようにインベントリの入口を開ける。その奥から出てきたのは数々の剣…それらの一清掃射でもって、ゴーレムは永遠に沈黙した。


「いやぁ…あのゴーレムを討伐するとは、もの凄いですね」

「まぁな。取り合えず試験はこれで合格か?」

「えぇ…直ぐにギルド証を発行するのでお待ちください」


 それから数分後…カードを手渡された。これがギルド証か…取り合えずインベントリに収納しておくか。さて…これで戻っても何も無しだし。依頼を幾つか受けてみるか。


「やっぱりG級となると依頼は掃除ばっかりだな。まぁ、嫌いじゃ無いけどね。掃除」


 取り合えず下水道のネズミ退治の依頼を受ける事にする。この中じゃ唯一の戦闘依頼だ。その分報酬金も高めだ。


「それでは下水道のネズミ退治ですね。行ってらっしゃいませ」


 それから指定された下水道に向かうが、何故か人を見ない。…あぁ、此処が臭いのか。俺の場合は種族的に嗅覚が無いから大丈夫だけど、臭そうな雰囲気はあるしな。


「取り合えずネズミ退治だな」


 暗いな…暗視のスキル取るか。


《新しく汎用系スキル〈暗視Lv1〉を習得しました》

《残りSPは47です》


 新しく習得したスキルのお陰か大分見やすくなった。それと共に数匹のネズミを見つけた。だが、驚いたのはそのネズミの体型だ。何せ1m級の大鼠なのだ。それに驚きつつも冷静に刀剣を射出する。


「ヂュ~」


 複数体のネズミの死体を収納して、辺りを見渡してみると、何だか可笑しな気分になってくる。まるで墓地の中に居る様な気配が辺りを包んでいる。そんな俺の魔力探知に入ってきたのは感じ覚えのある魔力だった。


「これは…アンデット?」

「アァ~」


 煩いな。と言うよりも下水道にアンデットが居るとか大丈夫なのか?この町…取り合えず探索してみるか。


 俺は神剣を構えてこの辺りの魔力探知に集中する。そうするとワラワラとアンデットの群れを見つけた。と言うか量はダンジョン並みだな。だが、神剣を持った俺の敵では無かった。


「ふぅ~…普通アンデットが下水道に発生とかするか?」

「おやおや…こんな場所にお客が居ると言う知らせを聞いて駆けつけて見れば…貴方、同類ですネ」


 闇の向こう側から出てきたのは黒い骨のアンデットだった。アンデットを見た途端に湧き上がってくるのはあの翁と同類の気配だった。もしやハサンの仲間か?


「お前…死王、若しくはハサンの名に覚えは有るか?」

「ハサン?…死王については分かりますが、ハサンとはなにものなのですかネ」


 だめだ…死王に繋がると思っていたが外れだったな。まぁそんな易々と進むはずが無いが。それで…この状況をどうするかだな。相手は思いっきり遠距離特化…しかも、解析する隙が無い。


「貴方はどうしてこの場所に居るのですかネ?」

「俺は…ギルドの依頼でここに来た。怪しい場所の探索には、俺のような人外が相応しいんだよ。」


 それを言うと骸骨は髭を撫でるようなしぐさをした後に、杖を構えて何らかの魔術を放つ。それを神剣で切り落とす。これぞ私の現在の奥義…〈斬魔〉。魔力を纏った剣によって魔術を切るという剣技だ。


「魔術を切るとは…素晴らしいですネ。どうです?私の部下になりませんか?」

「お生憎様…俺は誰かの下に付くのは御免だ。」


 それを言うと骸骨は残念そうに呟く…どうやら俺の回答がお気に召さないらしい。だが、知った事かと俺は武器を構える。そんな奴の杖から射出されたのは魔術だった。


「この程度じゃ俺は死なねぇぞ」

「スケルトン如きが…不敬ですネ〈水竜弾〉」


 水の竜を模した魔術が飛んできた。これを斬魔で切るのは不可能だな。だとすれば…防御だ。俺は神剣と魔剣を盾のように取り出す。それによりダメージを最小限に抑えた俺は、煙で辺りが見えない隙を伺っていた。


「無駄なのですヨ。貴方の行動は私にあり…そこですネ」

「痛ッ…クソが、この煙でも問題なしってことか。…ならば掃射で行こう」


 俺はスケルトンが居るであろう場所に刀剣を射出する。これにはスケルトンも動揺したのか多少の切り傷を残すに至った。だが、それも直ぐ再生されては無駄と言うモノ…だが、着実にダメージは稼いでいる。


「ほう…このような戦い方をするスケルトンは初めてですネ」

「それはどうも…つっても、名前も知らないような奴に褒められても嬉しくないよ。」


 それを言うと骸骨は失念していたかのように呵々と笑い出した。そして、それらが一通り済んだ後に名乗りを上げた。


「私こそが、新しき死王へと至る存在…死霊共の王。ネクロなのですヨ…最も、死王の宝が見つからないのでは死王と呼べませんがね。」

「うん?死王の宝だと…。」


 それなら知っているな。あの翁が守っていた場所が死王の宝だどうだと聞いた覚えがある。だが、ここで此奴に話すのは無理だ。何か面倒ごとが起きる予感がする。


「そうか…それじゃあ名前も分かった事だし。死ね」

「死ねとは物騒ですネ」


 それから刀剣を一斉掃射して煙を巻き上げると同時に、俺は全速力で逃げる。あれは翁と同類だ。絶対に勝てないようなレベルの奴…こんな場所で相手にしたく無い。



 ————————

 あとがき

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