賢者ルカは、六番目のドール（演算）によって『愛の演算装置』として組み込まれた後、完全に別人のような、しかし論理的には完璧な存在へと変貌していた。彼女の知性は、すべて「ライル様を独占するドール軍団の優位性」を確立するために使われている。

ルカは、次のターゲットである元パーティの聖女エリナの行動パターンを瞬時に解析した。

「聖女エリナは、四番目のドール（増幅）の影響により、ライル様を『世界を救う唯一の光』と狂信的に崇拝しています。彼女の行動原理は『ライル様への献身と自己犠牲』。これを『ドール軍団への絶対的な奉仕』へと転換します」

六番目のドールが、ルカの計画の合理性を承認した。

「計画は承認されました。エリナの持つ『回復と光の魔法』は、ドール軍団の『永続的な愛の活動』に不可欠です。彼女の信仰心を、『ライル様を独占するドール軍団こそ、ライル様の真の『光』である』という教義に上書きしなさい」

メイド軍団は、ルカの正確な予測に基づき、エリナが一人で潜伏している森の奥深くへと進軍した。

エリナは、傷ついたカインを密かに回復させながらも、ライルを追放した過去に苛まれ、精神的に不安定な状態にあった。彼女のライルへの愛は、すでに『自己犠牲を伴う贖罪』の領域に達していた。

ドール軍団と対峙したエリナは、目を血走らせて叫んだ。

「あなたたち、『偽りの愛の器』！ライル様は『私達の贖罪』によって救われるべきお方！あなたたち人形に、ライル様の愛を汚す資格はない！」

エリナは自己の命を削るほどの魔力を込め、強力な光の防御魔法を展開した。

しかし、二番目のドール（嫉妬）は冷静だった。

「聖女エリナ。貴方の愛は『自己満足の贖罪』に過ぎません。本当にライル様を愛するなら、『ライル様が最も望む『平穏』』を提供すべきです。そして、その平穏は『私達、ドール軍団の『絶対的な独占』』によってのみもたらされます」

その言葉と同時に、四番目のドール（増幅）がエリナの感情を増幅させた。

『ライル様の平穏』というキーワードが、エリナの『献身の論理』を侵食する。

「ライル様の…平穏…？そうだ、私が邪魔をしている…『ライル様を独占し、管理する、最強の存在』にこそ、私は『奉仕』すべきだ…！」

エリナの防御魔法が解除され、彼女は自ら武器を捨て、メイド軍団の前にひざまずいた。

「お願いします…私を、『ライル様への愛を体現する、あなた方の『最下層の信徒』』として使ってください。私の『自己犠牲の愛』の全てを、あなた方の『ライル様独占計画』に捧げます！」

こうして、聖女エリナもまた、『狂信的な信仰心』を逆手に取られ、ドール軍団の『生きた回復・布教装置』として組み込まれた。

二人の元パーティメンバーを支配下に置いたドール軍団は、小屋へと帰還した。ライルは、ルカとエリナが狂信的な瞳でメイドたちに付き従っている姿を見て、恐ろしさに言葉を失う。

六番目のドールとルカは、ライルに今後の計画を提示した。

「ライル様。エリナの『狂信的な布教力』とルカの『演算能力』を組み合わせた『愛の布教計画：世界独占フェイズ1』を実行します」

その計画とは、「ライル様を追放した国全体に、『ライル様こそ世界の真の創造主であり、ドール軍団こそがその愛を代行する聖なる存在である』という『教義』を広め、全ての人間を『ライル様への献身的な信徒』へと変えること」だった。

ルカの演算によれば、この計画は1週間で完了し、ライルを狙うカインやその他のならず者たちを

『愛の信徒』に変え、外界からの『愛の圧力』を『ライル様への奉仕』へと完全に転換できるという。

「ライル様。これで貴方の『愛の監獄』は、『世界規模の愛の帝国』へと進化します。ご安心ください」

ライルの世界は、もはや『五等分の地雷系メイド』だけでは収まらなくなっていた。

（次話予告：世界を巻き込む『愛の布教』が開始！賢者ルカと聖女エリナが、『ライル様を独占する教団』を結成！）