第22話 涙の約束

 人混みのざわめきから離れ、二人は駅近くの小さな公園に足を向けた。


 ベンチに並んで座っても、しばらくは言葉が出なかった。 夜風が冷たく、蝉の声がかすかに響いている。


 沈黙を破ったのは亮だった。「……俺、毎日お前のこと考えてた。会えない時間が長いほど、好きって気持ちと同じくらい、不安が膨らんで。そのたびに胸が潰れそうになった」


 その声は震えていたが、真っ直ぐだった。 真司は拳を膝に置き、強く握りしめる。「俺もだよ。でも、弱いところを見せたら……お前まで苦しませるんじゃないかって思った。だから、黙って強がって……それが結局、お前を傷つけてた」


 亮は顔を上げ、涙を浮かべながら言った。「強がらなくていいんだよ。俺は、お前の弱さごと全部好きなんだから」


 その一言に、真司の胸の奥で張り詰めていた何かが崩れた。 視界が滲み、堪えていた涙が頬を伝う。「……そんなふうに言われたら、もう隠せないだろ」


 真司は亮の手を掴み、ぎゅっと握った。その温もりが、互いに生きている証のように感じられた。


「俺たち、これからも不安になることはあると思う。喧嘩もするだろうし、すれ違いもするかもしれない。でも……離れたくない。絶対に」


 亮もまた、その手を強く握り返した。「うん……離れない。俺も。どんなに苦しくても、お前と一緒にいたい」


 二人の声が夜に溶け、涙は頬を伝いながらも、不思議と胸は温かかった。 まるで壊れかけていた絆を、もう一度強く結び直したように。


 その夜、二人は「泣きながら誓った約束」を胸に刻んだ。 ――離れない。苦しみも、喜びも、すべて一緒に背負う。


#BL

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