無頼派転生奇譚

星屑旅

第1話 始まり

僕はミタカという町に住む高校二年生の津島麟、という。

好物は蟹に味の素。嫌いなものは、犬という、本当に何の変哲もない、男子高校生。

そんな僕、どうやら―「太宰治」だったらしい。

どういうことだ、なんて頭がこんがらがるのは仕方ない。僕もそうだった。


まぁ、順を追って説明するとしよう。


事の発端は、一時間前に遡る。


今日は、桜の散り始めた四月の第一日曜日で、明日は高校の始業式である。

午後四時頃になって、のろのろと明日の準備を始めた。

課題を確認して、通学鞄に詰め込む。それなりに進学率の高い学校なせいか、はたまたこれが普通なのかは知らないが、課題はかなり多かった。

まぁ、無論。

それなりに成績優秀である僕の手にかかれば、一週間ほどで終わったが。

鞄に荷物を全て押し込み、ふぅと一つ溜息をついた。その時だ。


 ピンポーン


インターホンが鳴った。

誰だろうか。宅急便か、近所の人か、はたまたセールスか。

「…はい。ええと、どちらさまで」

「こんにちは!」

ガチャリ、と玄関の扉を開けると、間髪入れず、そんな明るく溌剌とした声が返ってきた。眼の前には、雀斑の黒服。後ろには、同じような黒服が…四人。

「……あの」

「津島麟さん、ですよね?」

誰ですか、と問おうとしたが、その言葉は、雀斑の黒服によって掻き消された。

「……いや、まぁ、はぁ、そうですが」

仕方なく、答える。なぜこんな怪しい奴らに僕の名前が知られているのか。おそらくこの時、僕は大口を開けて阿呆な顔を晒していただろう。

「そうですか!良かった良かった。」

しかし、目の前の雀斑男は僕の顔など気にせず、そう言って胸を撫で下ろした。何が良いんだ。

「ゴホン。いやぁ、突然すみませんでした。

 僕たち、貴方にお話があって来ました。」

よろしいですか?と雀斑男が首を傾げる。はぁ、まぁ。と、適当に頷いた。そりゃあ来られたんだから、聞かないわけにはいかないだろう、と。

しかし、それが間違いだった。

雀斑男は、僕の全く予想打にしなかった、爆弾発言を落としたのである。

「……貴方は。

 いえ、貴方の前世は、太宰治でした!」

―と、まるで、宝くじが当たりましたよ!とでも言うかのように、嬉々として。

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