#11 委員として

既に埋まっている三つのセーブ欄のうち、1番上の最古のデータを上書きするZer0。ばいばい職員室。

『あぶねー。カッコよく決めたのにセーブ忘れて危うくダサくなる所だったわ』

【時すでにお寿司】【俺はマグロがいい】【しかし銀の皿は美味い】

『......喧しい団結力だな』

リスナーのボケを横目に、いつぶりだろうか、3階へ戻る。


『ふう〜〜。来たぞお前らぁ〜!じゃここいらでぶっ決めますかぁ!』

【かましたれ】【やっちまえ】【血で血を洗え】

最終決戦だから物騒なコメントばっかだな......まあいいか、ホラゲーだし。

『うっしゃ!じゃ、行くぞ!』

ドアに手をかけるZer0。

いざ、[3-2]へ


『まあ席は分かってるから進むか、こいつ主人公席なんだよな......いいなーずるいなー』

【まだ言ってら】【未練たらたらじゃん】

依然として主人公の席に対する恨み節を唱えながら、教室の1番後ろで窓際の席は向かう。

『はいはいそんで......課題をゲットしますと...』

机の中を確認、課題を獲得すると前回同様、目の前に

幽霊が立っていた。


[なーんだ。キミ、忘れ物取りに来たの?ダメじゃないかこんな時間に。校則違反だよ]

『オメーを倒しにきたんだよ!いっちょやるか!?...ヘッヘッヘ、ボコボコにしてやるよぉ』

【チンピラ】【雑魚キャラ】【かませ】

コメントでも言われてる通り、すぐやられそうなキャラの手本みたいなセリフ吐いてんな。

[なにか言い訳とかある?聞いてあげるよ]

その直後、また不自然な間が空く。ここだ。

『おっ!』

画面にはこう表示された。

[1-5のクラス写真を使用しますか?]と。

『もちろん[はい]っと!......こっからどうなるかな...?』

選択すると主人公の手には写真が持たされていた。そして、それを幽霊に向けて見せる。

[これは......クラス写真かい?......このクラスは...]

写真を見て少し言葉が詰まる幽霊。

『それはアンタのクラスの写[君のクラスの写真だろ?]......主人公こいつ喋るんかい......』

【ドンマイ】【草】

答えを言おうとするZer0に主人公の言葉が重なる。

主人公の言葉でぽつりぽつりと話し始める。

[そうだよ、これは僕のクラスの写真だ。これは......確か入学してすぐの4月頃に撮ったっけな]

[懐かしいな、あの頃はまだクラスの雰囲気がぎこちなかったっけ。......僕は学級委員になってさ。委員として良いクラスを作っていこうって決意してさ]

[大変だったけど......楽しかったなあ]

[......でも、そんなのは一瞬だった。僕にとっては]

その言葉を機に画面が暗転し、[1-5]の教室が写し出される。しかし見てきた今までのものと明らかに違うのはクラスの人間が大勢いるというところだ。これは......クラスの日常か?


クラスの後方で集まって駄弁っている男子生徒数名に焦点が当たる。

[やっべー!数学の教科書忘れちまった!!]

[はは、お前マジかよ!まあ別のクラスのやつに借りればよくね?]

[そうだよな!あぶねーあぶねー]

[先生にバレたらめんどくせーからな、気をつけろよー?]

[分かってるって!]

なんてことはない。よくある会話。

その直後、ガラガラガラと後ろのドアが開く。入ってきたのは

[人から教科書を借りるのは校則違反だよ。正直に先生に言わないと]

生前の幽霊だった。

その言葉に教科書を忘れた男子生徒が顔を顰める。

[えー?いいじゃんかよ、委員さんよぉ?別にバレやしねーって]

[バレるバレないの問題じゃないよ。ルールは守らなきゃ]

[チッ、うっせーな。いいじゃねえかちょっとぐらい]

[そうそう、ちょっとぐらい許してやれよ]

[今回だけは見逃してやってよ、こいつ普段はそういうタイプじゃないんだよ]

反抗する男子生徒と頼みこむ声を上げる友達2名。

しかしその言葉には耳を貸さないと言った様子で

[君のそのを許してしまうと周りの人もそう言い出すだろう?ちょっとぐらい許してくれ、ちょっとだけなら良いだろ、と。

そうすると皆んなが校則違反をしてしまうことになり、風紀の乱れに繋がる。学級委員として容認できないよ]

長文の応酬を喰らった男子生徒はうんざりした様子で

[あーはいはい分かりました、借りませんよ]

ぶっきらぼうに吐き捨てて去っていく。

[頭かてえな]

[良い子ちゃんが、うぜー]

その後ろを追うように友達も目の前を去る。文句を置いて。そして暗転するとともに幽霊の言葉が呟かれる。


[僕はより良いクラスのために頑張ったつもりだった。忘れた事を隠そうと他人に借りようとした人を止めて]


さらにクラスの風景に変わる。今度は教室の前方の机で話している女子のグループに焦点が当たる。

[それでさ〜、ウチの彼氏が]

[まじ!?それちょーヤバくない?]

[それはないわ〜]

[ねえ、]

その会話を割いた主は

[今日の黒板消しの係、忘れてるよ]

またもや彼だった。

[えー?ちょっとやっててくんない?]

[そーそー、今この子の彼氏の話聞いてるからさー]

[その話は別に今じゃなくても聞けるよね?それよりも先にクラスの仕事を優先するべきじゃないかな?]

その言葉に女子生徒はたじろぐ。

[いやまあそれはそうだけどさ......]

[気付いてんならやってあげなよー。良いじゃん別に]

反論する友達に理路整然と話す幽霊。

[ダメだよ。クラスの仕事はきちんとその人がやらなきゃ。誰かに任せると他の人も誰かに任せてもいいやってなってしまうよ。そんな人任せのクラスになってしまうのは良くない。しっかりやってもらわないと。やらないんなら先生に報告するけど]

[いやでもっ.....]

[いいよもう、分かったよ。ウチがやればいいんでしょ]

はぁとため息をついて立ち上がり黒板へ向かう女子生徒。睨みつけて離れていく友達。

[きっも]

[なにあいつまじで]

そして幽霊が語る。


[仕事を忘れてる人をきちんと咎めてさ]

[でも、クラスの人には分かってもらえなかった。みんな僕を無視するようになって「良い子ちゃん」「先生のご機嫌取り」「チクリ魔」「内申稼ぎ」いつしか影でそう呼ばれるようになっていたのに気付いたのは......いつだったっけ]

[先生には......相談しなかったの?]

主人公が問いかける。

[そりゃあもちろん言ったさ。......最初は先生も親身になって聞いてくれてたよ。でも...]

再度場面が変わる。生徒が全員机に座っている。これは授業中だろうか。しかし教師の姿は見えない


ドアが開かれ急いできたのだろう、息が切れた様子の教師が教室に入ってきた。

[いやー、すまんすまん、立て込んでてな。じゃ、進めてくぞ。号令はいらないからなー。]

そう言って黒板に文字をガリガリと書き進めていく。

[今日やっていくのは前回の続きの、この]

[先生]

今回のテーマを書いて授業を始めた教師に向かって手を挙げたのは幽霊であった。

[その2行目の所、漢字間違ってます]

[ん?ああ、そうだな間違ってるな悪い悪い]

字を訂正しようと黒板消しに手を伸ばした教師をさらに制する。

[それと遅刻したことについてきちんと謝ってください]

その言葉に一瞬眉を顰める教師。しかしすぐに顔を戻して謝罪をする。

[そ、そうだな。すまんお前ら]

[全然いいっすよー!]

[そーそーウチら気にしてないしー]

その謝罪に擁護の声を上げる生徒の数々。


[僕が先生を注意したあの日から、真面目に取り合ってくれなくなっていた。いつの日か僕はひとりぼっちだった]

[それだけなら良かったんだ。ただクラスのために動けばいいんだから。でも...]

下を向いてなんとか言葉を紡ぐ幽霊。

[ある日から、僕を陥れ始めたんだ。]



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