♯6 いざ校内
『やーっと入れたな~。......中はまあ普通の学校だな。とりあえずこっからどうすりゃいいんだ?教室に行くんだろうけどさ』
正面玄関から入って現在立っているのはズラッと靴箱が並ぶ昇降口。
普段は学生たちで賑わう場所であるが、夜の雰囲気もあってかどことなく寂れたように感じる。
校内に入ってすぐ指示やらがあるかと思いきや何かが出てくる雰囲気はない。
『んじゃ一旦廊下行きますかと.........お』
最近の学校には珍しい木製の靴箱を通り抜けて昇降口との境目であろう場所に立つと主人公が言葉を発する。
[教室は3階か......まずは職員室に教室の鍵を取りにいかないとな...]
『また鍵かー。つっても職員室ってどこにあんだ?』
【普通は1階じゃね?】【廊下進もう】
直接的なヒントにならないようなコメントばかりなので参考にしても問題無いと判断したのかそのコメントを読んで答える。
『そうだな、基本1階のイメージだし廊下歩くか』
といっても立っているのは長い廊下の中心に位置する場所とつながる昇降口付近。
真正面には2階へ続く階段。左右を見れば廊下が伸びている。
『右と左どっちから行くか......どうせなら正解ルートを当てたいな。
どっちがいいと思う?リスナー』
【右】【左】【左】
「右かなぁ」
リスナーのコメントを見れば左が若干多いように見える。それに対抗するというわけではなく単に自分の学校の職員室は右にあるので俺は右派だ。まあ聞こえてるわけではないのだが。
『コメント見た感じ左が多いな......。じゃあ右行くか』
【???】【逆張りすんな】【アホ】
リスナーのコメントに反して右側へ進むZer0。そこからさらに景色が変わる。
『おお、結構教室並んでんな...職員室あっかなー。......またポスターじゃん。
なになに~?あ、これは詳しく見れるとかではないのか。......[廊下は走らない!]か...』
【そんな小学校みたいに...】【お前走るなよ?】【手がかりとかではないのか】
廊下を歩いてすぐ、右側の柱に張り付けてあるポスターによってみればまたもや注意書き。しかし前回のものと違うのは手がかりなどでなく単に廊下の景色の1つといった感じだ。
そのポスターを見るやいなや廊下を駆け出すZer0。
『うっしゃ走ったろ』
【知ってた】【なんしてんねん】
まあ、そりゃそうだよな。彼はそういう人間だ。俺だってそうするかも。
『はいはい走ってくよ~。てかこの廊下なげぇな。こんなもんだっけ。......えなに!?』
「うおっ」
暗闇で端が見えないからなのか、延々と続くように思われる廊下を走りだしてすぐ、どこからか物音が聞こえた。まるで机の上から鉛筆が落ちたかのような。
その音でこのゲームを通じて恐らく初のビビる声を上げるZer0。その声で驚く俺。
『えちょやばいやばい、えこれこういうゲーム?てっきり謎解きゲーかと』
【廊下走るから...】【廊下のお化けだ】【そういうゲームだよ】
驚きで動きが止まる。果たしてなにかが起こるのか。
『.........何も起きねぇな。ただの脅かしか』
廊下の真ん中で立ち止まって見るも何も起きない様子だ。単なる演出だろうか。
『......ほんじゃ引き続き行くか。今度は歩いてな。』
【あ、学習した】【ビビったか】【お化けこわいもんね~】
『いや、は?ビビってねえし?普通に考えて廊下は走っちゃいけねえだろ俺はそういうルール守る人間だから。』
早口で弁解し今度は歩いて職員室を探す。
やーいビビってんの。
『うーん無いな...左だったのか?ったく、左なら左行けって言ってくれよなお前ら』
【は?】【数分前を忘れる男】【秘儀、他責】
『数分前?なかなか大変でしたね。ありがとうパンダ君』
【さかのぼりすぎだわ】【パンダじゃなくてキリンな】【あーもう滅茶苦茶だよ】
歩きに切り替えてから20秒ほど探すも職員室らしい場所は見当たらない。責任転嫁に走りリスナーとプロレスの様なやり取りをするZer0。流石である。
『いやだから.......お!ここじゃね?』
言い争う中でも足は止めずしっかり歩いていく中、他の教室とは違う大きめの部屋を見つける。
『上見たら職員室って書いてあんな!やっぱ職員室じゃん!!ほらな!右進んで正解だったろ!!』
【あーあ調子乗った】【こいつもう黙らせようぜ】【中には入れるのかな?】
頭上を確認してから自慢げに言い切ってドアに手を掛けるが如く視点を合わせてクリックをする。
鍵がかかっててこちらも入れない......ということはなくすんなりと中に入れた。
『え、こっちは鍵かかってねぇのかよ。なんで教室にはかかってんのにこっちのセキュリティーはガバガバなんだよ』
【そういうお約束なんだろ】【楽でいいじゃん】
『まぁそりゃそっか、じゃ鍵探すか。.......えちょ待ってなになになに!?
またなんか聞こえね!?しかも人の声!!!もう怖いって!』
鍵を探そうと真っ暗な職員室の中を歩き出した矢先、またもどこからか音が聞こえる。音というよりも声か。
『えなに!?なんて言ってんのこいつ。ちょ一旦待って聞いてみるわ........[ごめんなさい]?これがあれか、いじめられてた子の幽霊か。......まだ聞こえてるわ』
【うわほんとだ聞こえる】【なんで謝ってんだ?】【やけにリアルな声だな】
『ちょっと怖いけど......鍵探すか。.......てか電気付けたらよくね?見つけやすいだろうしもしかしたら幽霊どっか行くかも!!』
【謝ってんのに人の心とかないのか】【それいいな】【スイッチどこ】
『スイッチって基本ドアのすぐそこ......あったあった。んじゃあここ押してと.......。うしついた、幽霊はどうなんのかな......ん?』
それらしきものを見つけてクリックをするとどうやら合っていたようだ。職員室内が明るくなり視界が開けたように思える。幽霊の声が聞こえた方に目を向けようとするとまるでムービーのように自動で視点が動く、それも幽霊の声が聞こえた向きに
『まってまってまだ心の準備が!俺のペースでやらせて!!!!.......うわあああ!!でたあああ!!!』
いくつかの机を挟んで数メートルほど距離のある場所にて、佇んでいた。生徒らしき影が。
するとそのままこちらを向いて幽霊が喋る。
[ごめんなさい...!ごめんなさい...!ごめんなさい...!ごめんなさい...!ごめんなさい!!!]
こちらに気づいたせいなのかおびえたようにさらに何度も謝る。数度繰り返し一際大きな声で謝った途端、姿を消す。ふっと電気が消えるように。やがてムービーが終わり体の自由が利くようになる。
いままで黙ってムービーを見ていたZer0が口を開く。
『......じゃあ幽霊消えたしゲームクリアか』
【なんでだよww】【課題取りに行けって】【消えたってそういう事じゃねえだろww】
「ふはっ」
ボケなのか本心なのかわからない言葉にリスナーからのツッコミが止まらない。その流れに思わず笑ってしまう。怖い雰囲気が少し和らいだ。
『わかってるって鍵だろ?よし探すぞ』
『お、あった。たぶんこれだろ!見るからに鍵だし!......拾えた!......よっし、[3-2の鍵]だってよ!』
【ないすー】【すんなり見つかったな】【やっと3階だ】
特別な謎解きなどなく机を見て回れば机上の鍵をあっさり見つける。持ち物欄で確認するとどうやらこれが目当てのもので間違いないようだ。それと同時に主人公が口を開く。
[じゃあ3階に向かおう]
『よっしゃ、ほんじゃ行きますかねぇ~。いざ、3階へ!!』
そう言ってドアへ向かい職員室を出る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます