♯3 脳死・脳筋・脳貧
『動物の......置物?』
見つけたのは砂場に埋もれていた動物の置物。それも2つではなく6つほどある。
それに種類も皆バラバラだ。
『あらら~かわいいねぇ~。これで遊びましょうね~......うわ拾えた』
【脳死乙】【キリンさんかわいいねぇ】【なんか不気味】
一番近くにあったキリンの置物をクリックすると所持したようで右手につかんだ状態で表示されている。
『これ絶対ヒントだよな...あやしい...いったんセーブしとくか』
【そうだな】【賢い判断】
メニューボタンを開けば持ち物欄、セーブ、設定、終了と上から順に並んでいる。
上から二つ目をクリックすると三つの空白欄が表示される。これまた一番上の欄をクリックすると
[セーブ完了]という表示とともに時刻と場所、つまり校庭という文字が埋まった。
『おっけー。んじゃ残りはと...』
キリンのほかにはイヌ、ライオン、ゾウ、インコ、シマウマの5つだ。
『ま、とりあえず全部拾っとくか。......ありゃ拾えねえ』
ライオンの置物を拾って次はゾウの置物を拾おうとしたところ、拾うことはできなかった。バグなどではなくそういう仕様のようだ。
『まぁゾウはデカいし重いもんな、キリンさんとライオンくんだけ連れて行こう』
【ゾウはデブってこと?】【重い女子は良い】【←何言ってんだこいつ】
『そんじゃあ、引き続き走っていきますかねぇ』
走っているとどうやら校舎側の隅に着いたようだ。真っ暗な夜とのコントラストが激しい、夜空に溶け込むことを拒むような真っ白校舎。その壁には
『あ、なんかポスターあるじゃん』
白い壁に目立つ水色のポスター。近寄るとこれまたクリックできそうだ。
『学生新聞的なやつか...なるほどね、学校紹介的なやつか。
えーっと、学長は”ラタイタンタトタコタンオタイ"が好き...........は?
すいません、これどの国の言語ですかぼく日本語オンリー勢なんですけど』
【どゆことだ???】【わけわからん】【なんの呪文?】
ポスターの下部に書いてあるのは日本語で書かれたという事だけわかる文字の羅列。こちらとしても全く理解できない。
『ちょまて、これヒントだとしたらやばい詰むって。
.........あとは何かないか...。お、これは......』
ポスターから目を離しあたりをうろつくも目ぼしいものが見つからないことから
再度ポスターをじっくりと睨むZer0。何か見つけたのであろう。
『........[たぬきに注意!!]......なるほどな...』
【たぬきは注意せんでもええやろ】【相場クマとかじゃね】
右上の学校紹介の隅の方に少し目立つようたぬきの絵とともに注意書きが載せられている。一見なんともないように思える。たぬきというのが少し引っかかるが。
『う~~ん。.........ま、一旦おいといて他見てみっか』
ここであれこれ考えて長時間消費するのは配信的によろしくないと判断したのだろう、目を離して引き続き探索に向かう。今度は走るのではなく歩いて。
現在向かっているのは西の方角、正面玄関にも近い場所。
グラフィックを楽しむかのように視点を横へ縦へ動かすZer0。
『さてさて次は何が.........お?』
【なんか見えね?】【台みたいなのある】
そのコメントの通り、近づいていけば近づいていくほど闇の中でぼんやりとたたずんでいた幻影が鮮明になっていく。
しかしあれはただの台ではなくて......
『これ朝礼台じゃん、校長とかが生徒全員校庭に集めてなんか話すやつだよな。今から皆さんには~~とか言って』
【デスゲームの主催かよ】【うわなっつ思い出した】
そう、先生がことあるごとに上がってありがた~い話をする朝礼台だ。
こういったものまで再現されているとはなかなかリアルだ。......でも
「なーんか引っ掛かるような...」
これまたなんともないように見えるが謎解きという状況というのもあってどこか怪しく見えてくる。
『なっにっかあるかな~~ヒントヒント~』
大人4人は乗っても大丈夫そうな大きさの朝礼台をぐるぐる回って探っていくZer0。すると
『......あら、なんか箱みたいなのくっついてね?そういう設計?』
その言葉の通り正面から見て裏側に設置されている4段ほどの階段の外側面に少し大きめのトランプケースほどの箱型の何かがくっついている。
『お、クリックできたけど......なにこれ?はめれそうじゃね?』
【やっぱヒントか】【よくみつけたな】【さっきの置物とか?】
箱をクリックしてから表示された画面は2つの窪みが並んでいる。
『だよな、2つしか拾えなかったし置物使うっぽいな。んじゃこの右手のキリンをとりあえずぶち込んでその後に持ち物欄からライオン選んで右手に持ってきてと....。おっけいけたいけた。よし行ってこい!キリン!ライオン!』
この2匹によって何かが起こる。と思いきや
『.......なんも起きねえけどミスったかこれ。いやでも使用できたっつーことは置物は合ってんのか?じゃあ......動物が違うってことか』
はめこむことは出来たが何の反応も見られない。キリンとライオンが窮屈そうにしているのみだ。その2匹をつかみもう一度持ち物欄へ眠らせる。
『はぁぁぁめんどいなこれ、やっぱあのポスターの謎解きかぁ?.........いや待てよ?これ全部の動物の組み合わせやればいけるんじゃね?俺天才では』
【はい脳筋】【不正すんな怒】【製作者の気持ち考えろ】
その言葉にコメント欄から批判が殺到する。もっとも本気の者は1人もいないだろう。
『いや嘘ですよもちろんそんなことするわけないじゃないですかまったく』
早口で必死の弁解をしながらポスターの方へ戻るZer0。説得力もゼロだ。
『やーっぱこれヒントだよな、てかヒントじゃねえとありえねえだろ。これが謎解きとかじゃなく1つの文章なら俺はこの学校の教育を疑うわ』
【まじでわかんねえわ】【詰み】【これ実は~~】
先ほどと同様、ポスターのあの文とにらめっこしながら呟く。
答えなり手掛かりなりをコメントしているリスナーもいるがそれに目もむけず一生懸命謎解きに取り組む彼はまじめな人間なのだろうなと思う。こういったところも好きなのだ。
『.......あー!!!無理!!!疲れた!!!俺バカだからわかんねえけどよぉバカだからわかんねえわ!!』
【脳貧助かる】【その枕詞でほんとにわかんないことあるんだ】
キリがいいのでそこで一度スマホの画面をタップする。
「うしっ、トイレ行くか」
軽い尿意を覚えて体を起こし部屋を出る。
階段を下りている最中、自分も謎の文章から答えを出そうと頭を使うが何も閃かない。
諦めたその思考と入れ替わり脳内に浮かんだのは初めてZer0と出会ったあの日。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます