おじさんの日常

羽鐘

匂い

 おじさんという生物は、基本的に『臭いもの』と認識されている。


 加齢臭。

 口臭。

 足の匂いに脇の匂い。

 挙句の果てには屁の匂い。


 毎日お風呂に入っているし、歯も磨いている。

 シャンプーだって頭皮ケアの爽やかな香りのものを使っている。

 なんならほんのりと香水すらつけているおじさんだっている。


 しかし、おじさんは臭いものという認識が改善されることはない。


 だが、それでいい。

 何か匂ったとき、密集地点で誰かが屁をしたとき、迷わずおじさんを犯人に仕立て上げればいいんだ。


 それでいいんだ、おじさんは失うものはないのだから。


 その時のおじさんが流す涙は、世界で最も美しく輝くのだから。


 だが、その涙ですら、何故か臭いと思われるのが、おじさんの悲しいところである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る