トラベルプランナー
@Sliqba
トラベルプランナー https://youtu.be/hip0wDGTz7M
風車の街 触れる風が心地いい。
いつだっけか見た景色を夢想する。
いつも通り起こしてMEを
アンインストールして二度寝をした後起床、
もう聞き飽きた知らんおばあの声で起きる
「眼精疲労にお悩みの方必見!」
いつも通りの朝だ。
しじみなんたらだっけか、ずっと流れてるよなこれ
沈んみこんだボタンに爪を立て電源を
消した。寝息のする方に目をやると
まだ彼女は眠っているようだった。
ほんの2時間前ほどの出来事だったが、
相当疲れていたみたいだ。二人で確か
ダメだ思い出せない。思考を巡らす度二日酔いでいつもよりドス黒く粘度を増した血液が
脳の隅まで行き渡り頭の痛みを悪化させる気がしておれは考えるのをやめて体を起こした。
天井に無機質に張り付く
LEDが1人起きたおれを焼き付ける
紫外線を含んだかのごとく寝起きの俺の目には
刺激が強く、皮膚のやける感覚までしてきて
アホらしくなったので豆電球に明るさを落とした。
ひどく滞留した油の匂いが重く肺にのしかかる
早起きってのも状況次第じゃ1文の得にもならないんだと感じさせられる最悪の目覚めだ。
机に無造作に広げられたトラベルプランナーと
酒のゴミ、放っておいた大皿、
積み上がった吸殻
酔っていたから字がロシア語の筆記体の如く
酷い有様になっている。
覗くと月だの城崎だの空想と現実がいり混ざった
滅茶苦茶なものばかりだった。
この部屋に人間は居ない。
ただ受け入れるだけの掃除機と回り続ける
洗濯機のようにはいかない
受動的で死んだ生活を
したおれはそう思った。
生きるという定義は何なのだろう
体が吸収したエネルギーを外へと放出する。
でも体って、微生物とか細胞の集まりだし、そいつらがかってに生きて勝手に動いて勝手に死んでおれがいるっていうだけで、
俺と言う生物自体は存在しないのかもしれない。なにか意味や、意志を
持ってして動いている訳でもないおれはまさに
微生物の集合体なのだと言えるだろう。
爪の間でうごめく微生物だって必死に生きるために住処を探し汚れを食らっている。
同期でヤリチンのあいつも性病マンション
なんてあだ名を付けられているが、
少なくとも自分の欲を軸に見た目を磨き、
快楽を得て活力にしているのだから随分と
人間らしいマンションだなと思った。
死んだように眠る彼女を横目に文字に起こしたとて誰も取るに足らないような哲学を披露する。朝の日課だ。
部屋の一部に固めてある荷物をシワだらけの
カバンに詰め込み部屋を出た。
ベタつく床にはいじけたようなスリッパが
転がっている。それを踏みつけ外へ出る。
走る鉄塊はおれの上を交差するように駆けてゆく。
焼けつくアスファルトの上を必死に二本足で進む
皮肉にもこんなのが今日一"生"を実感した瞬間だった。
しとしとと、おれの服に点をつけてゆく。
小雨と言うには降りすぎだが
傘をさすほどでもない雨だろう。
目の前を笑いながら学生が駆け抜けてゆく。
ひとつ昔のことを思い出してしまう、今の俺みたいに死んだ顔をした大人に侮蔑の目を向け(ああはなりたくない。おれは自分のやりたいことで生きる)とか
いつかの広告みたいなことをいっていた。
かけ抜けて行ったあの学生もきっと俺をみて
そんなことを思ったに違いない。
ただただ今おれの服には雨粒の点々が増えるばかりだ。
さっきのカンカン照りの太陽は雨雲に
乗っかり涼んでいた。
金も無けりゃ車もない。おまけに無気力な
俺の性格とくりゃ、昨日二人で行けもしない
旅行の計画を立てていたことを思い出し、
滑稽だなと一人卑屈な笑みを浮かべた。
退屈な90分間の始まりをつげるそれが頭にも
響いてくる。
机の上で震えるそいつを手に取りメッセージを
確認する。「おはよう」
既読をつけ退屈なジジイの四方山話をbgmに
眠りにつく。こんなの
下手な睡眠導入より効くだろう。
退屈な時間に終わりをつげるチャイムが
おれの本当の目覚ましだ。
いつも通りの朝だ。
トラベルプランナー
朝日が差し込む部屋に、彼はもういなかった。
洗濯物を取り込むためにベランダに出ると心地よい
朝日が私を包み込んでくれる。嫌な夢を見た事も
忘れてしまうくらいに幸福感で満たされる目覚めだ。
部屋に入ると、タバコの匂いと油が混ざった
なんとも言えない不快な匂いが立ち込めていた。
随分と散らかっていて、放置されたカップ麺や
吸殻が積み重なっている。
雑に掴み取り全てひとつ袋に詰めた。
その時ふと机に置かれていたトラベルプランナーが
目に入った。
夏の旅行計画!!In長野県!!
1ビーナスラインを二人でドライブ!
2車山のペンションで1泊!!
3夜は二人で星空散歩
4霧ヶ峰で富士山見る!
5帰りに上高地にいく!!
まだ酔いが浅かった時に書いたものなのか、
随分としっかりしてある。
ページをめくるにつれ少しづつ現実味が無くなってゆくのが分かる。
1城崎でかに!!🦀たべる!!
つかさくんと一緒だからアレルギーでも
大丈V!!
温泉はいって海で蟹とる!!
字が汚くて読めたもんじゃないが、私にしては
可愛いことを書いていた。
最後のページだ
1 つかさくんと月!
つかさくんと月にいく!!クレーターにお湯はって
大きい温泉つくってつかさくんとはい(たい!
二人で沢山旅行したい!!
彼は部屋には居ないし、何時も私を置いて
行ってしまう。寂しいなんて言葉で表せないし
簡単に表したくもない。そんなに単純なものじゃなくてなんとも、寝る前傍にいた彼が居なくなっていて
朝起きると一人というものは他では表せない虚しさがあるものだ。自分の元から気づけば離れて居たものが久しぶりに汚れた姿で現れる
昔愛用していた抱き枕がベットの下で
ホコリにまみれて見つかるあの感覚と似ている。今の私にはこの部屋が汚れた
抱き枕と重なるようだ。
ふと部屋を見渡し、1人
彼との初々しい日々を思い出す
笑った彼の顔 纏っている雰囲気が好きで
漠然と恋をした。共通の趣味も話題もないのに
自分でも気づかないフリをし、彼にも
気づかれないようにして、無理やり話を合わせて付き合ったせいか、
会話には詰まることが多かったがそれでも私は
そんな彼といられるだけで幸せだった。
どこまでも無気力な
彼は外デートだって連れて行ってくれたことは無いし二人で旅行に行くなんて夢のまた夢だった。
彼との行けもしない旅行の計画を浮かべながら、
トラベルプランナーをそっと棚にしまった。
私はふと思い出したように、線に繋がれ
無理やり餌をやられているような
それを手に取り[おはよう]と送信した。
いつも通りの朝だ。
私もそろそろバイトだし準備しないとな、
ハヌマーン/トラベルプランナー
トラベルプランナー @Sliqba
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