第2話
ワタシが憂太と初めて会ったのは、コンビニのバイト先だった。
制服姿で同じ高校だってすぐに分かった。
せっかく学校から離れたトコにしたのにな。
またバイト辞めなきゃダメじゃん。ヤダなって思った。
「如月さん、この男の子新しく入ったアルバイトの子で梶山君。同じ高校でしょ。色々教えてあげてね。」
「はい…」
マジ…最悪。教えてあげてねって…同じ高校だとか言うなよ。
「ワタシのこと、知ってる?」
「えっ、いや知らないですけど・・・」
「そっか。まぁ…いいや。」
とりあえずワタシのことを知らないなら、まぁ今日だけ我慢しよ。
「じゃ、レジ打ちから教えてあげるよ。」
「あっ、はい。梶山憂太です。よろしくお願いします。」
すごく普通の男の子だった。
バイトの終わり際、
「先輩、今日はありがとうございましたっ!」
その子がワタシにお礼を言ってくれて、ニコっと笑ってくれた。
その顔が可愛かった。
「先輩、おはようございますっ!」
次の日、学校に行くと後ろから声をかけられた。
「あー・・・キミさ、学校でワタシに話しかけない方がいいよ。じゃあね。」
ワタシはそれだけ言って、憂太に背を向けた。
とりあえず今日バイト先に辞めるって言わなきゃ…面倒だな・・・
学校に居る間は何も考えない。
それが一番楽だから。
早く学校終わってくれないかなーって。
そればかり頭に浮かぶ。
学校が終わったら、そそくさとバックを肩にかけて、学校を出て、バイト先に向かった。
「おはようございます。店長いますか?」
「おはよう、如月さん。店長ならバックルームにいるよー。」
「そうですか。ありがとうございます。」
パートのおばさんにペコって頭を下げて、バックルームに行こうとしたら、
「先輩、おはようございます?」
「…朝、おはようしたじゃん。」
また憂太だった。
「あははっ。そうですよね。先輩もバイトですか?」
「あー、ワタシは違うよ。キミはバイト?」
「はいっ。」
そう言ってまたワタシに笑ってくれた。
今日はバイト辞めるの…やめておこっかな。
次の次の日、学校で憂太を見かけた。
ワタシは気付かないフリをして…そのまま通り過ぎようとした。
「あっ、先輩。こんにちはっ!」
「あっ、うん。」
「先輩、明日シフト入ってますよね。僕も入ってるんで、また宜しくお願いしますねっ。」
「そっかー。うん、了解だよー。よろしくねー。」
ワタシは足を止めずに、憂太に答えて、そのままその場から離れた。
「お疲れ様ー。はい、コレ。」
次の日、バイトが終わったあと…憂太に缶コーヒーを渡した。
「えっ。あっ、ありがとうございますっ、先輩っ!」
「うん。ねっ、ちょっと話そっか?」
「あっ、はい。」
ワタシは憂太を外に連れ出した。
コンビニの軒下で2人で並んで立って…
「ねー、ワタシのこと知ってる?」
自分の心臓の音が、トクッン…トクッン…ってうるさい。
「えっ・・・バイトの先輩で…学校の先輩で…ぐらいですかね。」
「そうじゃなくてさー。学校の噂。」
「あー・・・」
気まずい空気が流れる。自分で作っておいて…なんだけど。
トクッン…トクッン…トクッン…
ワタシの方がその空気に耐え切れなくなって…
憂太の顔を覗いて…
サーっと血の気が引いた。
めちゃくちゃに悲しい顔をしてた。
「あー。ごめん…。なんていうか…ごめんね」
「・・・先輩は悪くないです…」
「もう帰ろっか?」
憂太はコクリと頷いて…
「送っていきます…」
ぼそっと言った。
「あー…いいよー。大丈夫だよー。」
こんな気まずい空気…
とりあえず耐えられる気がしなかった。
「コーヒーのお礼です…帰りましょう…」
子犬のような目をした憂太に…
「うん。ありがと。」
家まで送ってもらった。
この時…
初めて自分の過去をクソ程…後悔した。
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