リアルなG!
「ねえ、
「……だ、だめです」
「どうしても?」
「絶対だめです」
「少しだけなら、いい?」
「少しだけでもだめです」
「残念、あきらめるよ」
小さなテーブルを囲って食事をする
「ぼくね、ホクロとか
「え? わ、わかりません……」
いきなりすぎて、返答に困る質問だ。顔見知りていどの他人を部屋にあげてしまった桃瀬は、むやみに緊張した。ありふれた
桃瀬は、外出した石和が帰ってくるまえにブラジャー入りの紙袋をクローゼットの上段へ押しこむと、
「遅くなってごめんよ。ちょっと調べたら、閉店まえの花屋を見つけてね。あらためて、お誕生日おめでとう。ガーベラという花だけど、気に入ってもらえるかな? きみの親切に感謝をこめて、ぜひ、受けとってほしい」
まるで恋人のような
「食器棚のひきだしに……」
同じ
「ぼくの部屋にもでたことがあるよ。ハイツまちだ(アパートの名前だよ)は、築五十年になる木造建築だからしかたないね。ガーベラを
ごみ箱へ、ぽっきり茎の折れた花とGをハンカチごと捨てる石和は「これでよし」といって、水道で手を洗った。
「ご、ごめんなさい。せっかく買ってきてくれたのに……。わたし、花代を弁償します。おいくらですか?」
「気にしないで。
「そんな、でも……」
「男の口から、金額を云わせないでおくれ」
「あ……(無神経で)、すみません……」
とっさの判断とはいえ、花束のあつかいを完全にまちがえた桃瀬は、石和の寛容さが身にこたえた。申しわけない気持ちでいっぱいになる。
「さあ、夕食にしよう。理乃ちゃんのぶんも買ってきたから、好きなものを選んでいいよ」
リビングのテーブルに、サンドイッチやおにぎり、焼きうどん、スティック野菜のサラダなどを並べる石和は、コンビニ袋を折りたたんで坐った。
「こんなにたくさん?」
「出かけるまえに、理乃ちゃんの好物とアレルギイを確認すればよかったね。食べられそうなものがあるといいけれど……」
「だいじょうぶです。それじゃ、おにぎりとサラダをいただけますか?」
「遠慮してる? ジャムパンとプリンもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
なごやかな雰囲気で夕食をすませたあと、石和はシャワーを浴びた。替えの下着は、弁当を買うついでに調達し、抜いだ靴下といっしょにコンビニ袋にまとめる。押入れからタオルケットをひっぱりだす桃瀬は、同じアパートの住人とはいえ、石和のかもしだす
さすがにパジャマを用意できなかった石和は、スーツが皺になるのもかまわず、リビングで丸くなって眠った。桃瀬は悩んだ末、朝風呂に予定を変更すると、ベッドのある寝室にすべりこむ。
薄い
「おはようございます……」
「やあ、おはよう。気持ちのいい朝だね」
どういうわけか、きのうと異なる色合いのスーツを着ている。いったん部屋にもどったようすで、見れば、髪型も整えてあった。パジャマのまま立ち話におよぶ桃瀬は恥ずかしくなり、前髪で顔を隠した。
「理乃ちゃんさえよければ、後日、ぼくに逢いにきてもらえるかな」
✦つづく
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