ギャンブル中毒が行く、学園異能力バトル物

5円

第1話 ギャンブル中毒の男、転生する

 俺はギャンブル中毒者である。


 昔から賭け事が好きすぎて、高校生の頃に祖父の遺品を賭けたギャンブルをしてしまい、その勝負にも負けて無事親に勘当された。

 その後、適当なアルバイトを掛け持ちしながらギャンブルを続けて生きていたが、この前の宝塚記念で大負けした結果、所持金が0になってしまった。

 このままでは生きていけないということで、後ろ暗そうなところにお金を借りたのだが、そのお金もパチンコで刷ってしまった。ちっ、勝てば利子込で返しても10万は残る計算だったのに……!


 そんなこんなでお金を返せなくなった俺は今、コンクリートで固められて東京湾に沈めかけられています。誰か助けて下さい。


 

 「なぁ、お前さんよぉ。こんな仕事してる俺が言うのもなんだが、まともに働いて金を返すっていう手は無かったのか?」


 「無いです!」


 「なんでそんなニコニコしながら即答できんだよ。こえーよ。普通に生きてきてその思考ができるお前がこえーよ。よっぽど俺よりアウトローだよ」


 「え、だってギャンブルやめられないでしょ」


 「いや、そんな何言ってんだこいつみたいな顔してんじゃねぇよ。それ言いたいのはこっちだよ。命よりギャンブル取るのは少数派なんだよ。絶滅危惧種だよ」


 「ちょっと何言ってるか分かんないです」


 「なんで分からねぇんだよ。はぁ……もういいや、海に沈めるからな。何か言い残したことはあるか」


 「安西先生……パチスロがしたいです……!」


 「誰が安西先生だ。そこまで老けてねぇわ。はぁ……それじゃあさよならだ。来世があるといいな」



 ヤクザが押したドラム缶は、その勢いのまま横向きに転がって行き、黒く染まった東京湾に沈むのだった。





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 「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」


 「あぁ、ちょっと待ってね。お腹が減ったのかしら……」


 あ、どうも転生ガチャに勝った者です。いやー本当に転生なんてあるんすね、死んだら地獄に行くと思ってましたよ。地獄、天国、転生の3択で見事に転生を引き当てた俺はやっぱり幸運だね!


 しかも、やたらと広い家とか高級そうな衣服に包まれている両親を見るに、転生先は良いとこの家っぽいね!親ガチャ大成功じゃん!がはは!


 「はーい、かけるちゃんミルクですよー」


 おっ、飯だ。粉ミルクうまー、たんぽぽより美味いわ。これだけで前世よりも良いもん食ってるな、俺。


「はーい食べ終わったら、けふってしましょうねー」


 げふっ。おっと思ったより汚い音が出たな、失礼しました。いやー顔の良い女の人に世話してもらえるなんて最高だね。然るべき場所なら数万は下らないぞ。


 「帰ってきたぞー!翔ー!その天使みたいな顔をお父さんに見せてくれー!」


 げっ、むさいうざい痛いおっさんが帰ってきやがった。こんな美人の奥さんを捕まえてくるリア充は消し飛べ。


 「あなた、まずは手洗い。翔が病気になったらどうするの」


 「おっと、それもそうだな。よーし、翔待ってろよ―!」


 そう言って洗面所に走り出すおっさん。そのまま滑って転んで頭ぶつければいいのに。


 「もう、困ったお父さんねー翔」


 まったくだぜ。俺の親父ならもっとちゃらんぽらんじゃな困る。俺が成長したら、『あの子、あの優秀な人の子供にしては残念よね』なんて言われてしまうだろ!俺の親父なら『ギャンブルで生活費全部溶かしました』ぐらいのことをしてくれ。


 「よーし翔!お父さん、綺麗になったぞー!」


 そう言って俺のもちもちほっぺにおっさんのジョリジョリ髭が押し付けられる。


 痛ってぇ!これ拷問だろ!汚いおっさんの髭で俺の餅みたいに美しいもちもちほっぺをヤスリがけする拷問だろ!誰か助けてー!SAN値も耐久値もピンチです!


 

 俺が「いやいや!」と足をバタバタさせておっさんの攻撃に抵抗していると、女神のような母様がおっさんの魔の手から助けてくれた。


 

 「あなた、翔が嫌がってるでしょ。しつこくしていると嫌われるわよ」


 「わー!それは嫌だぁー!翔ー!この俺を許してくれー!」


 そう言って俺の足元で床に頭を擦り付ける親父おっさん


 うむ、苦しゅうない。そのまま24時間土下座を続けていたら許してあげないこともない。ただし、その代わりにギャンブルをさせろ。転生してはや3ヶ月は経とうとしているが、そろそろ禁断症状が出てきて指が震えてくるんだ。ほら…今も。


 「あっ!翔の指が震えてるじゃない!そんないお父さんの髭が痛かったのね、可哀想に……。これを気にあなたも反省しなさい!」


 「あぁ…ごめんよ翔〜!これからは毎日髭を3回は剃るようにするからー!」



 そんなことはどうでもいいからギャンブルをさせてくれ。アンパン◯ンパチンコでもいいから!


 

 「あっ!そういえば翔にお土産買ってきたんだ!一緒にトランプしようなー翔!」


 「バカねー、生後3ヶ月の赤ちゃんがトランプなんて出来るわけないでしょ?せめてこの子が3歳になるまでトランプは諦めなさい」


 「そんなぁ……」


 トランプ……だと…!?トランプといえばブラックジャック、バカラ、ポーカーなどのギャンブルがやり放題じゃないか!さすがカッコよくて顔が良いハンサムな親父だぜ!よーし早速親父の晩飯の肉を賭けてポーカーでも……。


 「間違って翔が口に入れないように、これは私が没収しときます」


 「わかったよ……」


 えっ!?没収!?なんてことするんだ母様!そんなことをしてしまえば、俺のギャンブル欲が天元突破して親父の鼻毛で花占いし始めるぞ!

 だから、没収だけは――――――!


 「はーい、それじゃあ翔の手が届かないところに隠しとくわね」



 NOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!










 次の日、親父の鼻毛は一本残らず駆逐された。

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