第18話 終幕

 ギンヌンガ・ガプ内部の帝国首都星フォルセティでは、新皇帝レオニダス・オダ・ツァオツァオへの帝位禅譲の儀式が行われようとしていた。

 レオニダスは儀式の開始を自室で待ちながら、机の上に残されていた影達からの手紙を読んで、笑みを浮かべながらつぶやいている。

「次に会うときも、味方として会いたいものよ」


『新皇帝陛下 

私達の護衛の任務も、本日で契約満了となります。

本日のパレード、禅譲の儀は、陛下の目に入らぬ場所から警護いたします。

明日からは、一介の銀河帝国市民として陛下の治世を拝見することになるでしょう。


陛下の治世で戦争と飢餓に苦しむ市民が減っていくことで、私達のようなものを陛下への刃として雇う者が現れないことを願っております。


死と隣り合わせの厳しい道行でしたが、陛下の人柄にも触れられて楽しい旅でした。

もう会うことはないでしょう。お元気で。

                       レッド、 ブルー、 シルバー』


**


 どこかの星の薄暗い部屋で男女二人が、久しぶりの再会を果たしている、のだが。

「それで……なんで三か月間、何の連絡も寄こさなかったの?」

 男は、かなりお怒りモードの女性に対して、言い訳を始めた。

「ほら、クワナ宇宙港の大事故、ニュースでみたでしょう? 俺、あそこにいたんだよ。前にも話したように俺、極秘任務に就いていたから連絡できなかった。ここだけの話、レオニダス新皇帝の護衛をして命を救ったんだよ」

「……そうなんだ。それは大変でしたね。お疲れ様……

なわけあるか! このボケ! あほらし過ぎて騙されるふりする気も起きんわ!」

「はは、いや、まあ、普通そうなるよね……」

「それで、埋め合わせは何かないの?」

「……それは……どこだっけな……あった! はい、クワナ宇宙港名物のスイーツ」

「はあああ? なにこれ、月餅? 潰れてるじゃない。その辺で買ったでしょ? 賞味期限も切れてるし……もうサイテー」

 このサイテーな男がうっかり本音をもらしたレッドなのか、それともただのほら吹きの営業マンなのかは、銀河の将来には何の影響もない。


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その名はレッドシャドー 柊 悠里 @dica_onima

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