第14話 闘いの合間に

 ハンニバルは惑星ニブルヘイムのレオニダスの軍政庁にて、クワナ宇宙港襲撃の報告を受けて、直径数cmの球体が膨張して体長四百m体重十億トンの大怪獣となった仕組みを考えていた。

“周辺宙域に渡り、厳格なワームホール及び次元遷移の管理網が張り巡らされているクワナに外部から遷移することはあり得ない。最初からあれだけの質量の物体が持ち込まれていたとしたら、たとえ数cmの大きさでも宇宙港の床や施設が破壊されるはず。

 重力と質量を打ち消していたとしか思えない。はて、最初の大きさに戻ったカブトムシの表面をコーティングしているオレンジ色の物体、どこかで見たような……〟

何かに気付いたハンニバルは、クワナで第三星域連絡ポートの分離と宇宙港としての業務再開を待つシルバーに量子もつれアンシブル通信で、メッセージを送った。


**


 未曽有の災厄に見舞われたクワナ宇宙港は、銀河の最重要ハブにふさわしいスピードで復旧しつつあった。第三星域連絡ポートは生存者の救出後、事故調査の為に閉鎖された。調査完了後には、宇宙港本体から分離され交換される予定だ。

 施設破壊を引き起こしてレオニダス将軍の護衛に殺害されたカゼハ・タケダ・フローレンスが、ヴィクター将軍の血縁であり、一族の恨みによる犯行であるとのニュースが報じられていた。カゼハに同行していたヤジリと名乗る少女は依然として消息が不明であり、他の星域連絡ポートでの捜索が続けられている。


 第二星域連絡ポートで銀河中央への移動を申請し、三週間近い待機生活を続けていたレオニダス一行にやっと二日後の移動許可が下りた。

「やっとフォルセティに行けるのか! あの大怪獣襲撃からこちら、毎日のようにホテルの部屋を転居しての缶詰生活、いい加減あきてきたぞ。娯楽施設はいくらでもあるのにいけないからな」

 レオニダスが不快さを隠そうともせず大声で嘆息する。

 彼とレッド、ブルー、生き残った護衛四名はそなえつけのボードゲームと麻雀だけを延々と繰り返している。部屋を変えるたび張り替える順位表と役満記録は天井から床まで垂れ下がっていた。

「ところでシルバーを最近見かけないが、何をしている?」

「シルバーおじさんは、ハンニバルさんの依頼で惑星ニブルヘイムに何かを取りに行っているよ。将軍、それロンです! 高いですよ」

 飲み込みの早いブルーは、ずぶの素人からここのところ急激にゲームと麻雀の腕を上げている。

 しかし、他人の心が読めるレッドが不動の一位というのは大人げない話だ。


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