第10話――始めての友達

 周りが優しい紫色の光に包まれた。

その瞬間、辺りに落ちていた家の破片が浮き上がり、家があった方へと戻っていく。

 な、なんなんだ……。家が、みるみる戻っていっている。

す、すごい……、超能力って

「すごいですよ!巫女さん」

 私がそう言うと、巫女さんはニコっと笑った。

「ありがとうございます。

そんな褒められちゃったら……、私、やる気出ちゃいますよ」

 巫女さんは、さらに力を入れたのか、周りの光が先ほどよりもまぶしくなった。

 思わず目をつぶった私は、光が消えるのをそっと待った。


「ふぅ……できました」

「本当ですか?あの、ありがとうございま……


って、えええ!」


 目を開くとそこには、私の家は無かった。

しかし、オシャレで綺麗な今どきの家がそこには建っていた。

一度は憧れた「住んでみたい家」そのままだ。

「あのっ、巫女さん。これは……」

 巫女さんはキラキラな笑顔で私に笑いかけた。

「霊さんに褒められちゃったので、やる気が出ました。

せっかく家を作り直すならオシャレで綺麗な家のほうがいいかと思いましてですね

そこら辺のコンクリートや木を使わせていただき、新しく霊さんのお家を作らせていただきました」

 確かに嬉しいのだが……、道路のコンクリートや周りのものが、なんというか

ボロボロになってしまった。


 凄くありがたいが、それと同時に申し訳なさが襲ってきた。

「巫女さんありがとうございます……でも……」

 私が元の家にしてほしい。と言おうとした時。


「へぇ、すげぇ綺麗な家になったなぁ。ありがとな、嬢ちゃん。

んで、超能力ってどうやって使ってんだ?

気になるなぁ……私に教えてくれよ」

「す、すごい。

家が綺麗に

なってる。

中見たい。見たい」

 今までぽかんとしていた2人がワクワクしだした。祓ちゃんは今すぐ家の中に行こうとしちゃってるし…花も、巫女さんに興味津々だ。

「まぁ、いっか!

私も家が新しく綺麗になって良かったし。それに……」

 私は巫女さんの方へと目線を向け、ハイタッチするポーズを取った。

「巫女さん。やるじゃん」 

 今まではかしこまって敬語を使ってたけど…彼女がオタクだって知った時、

距離がものすごく近くに感じた。

 それに、私の何気ない言葉が、巫女さんの救いになっていただなんて。

ちょっと嬉しいじゃん。

「はい!」

 そう言って巫女さんは、私の手にハイタッチをした。


 少し温かい風がなびき、周りにはパチンという音が響いた。

 巫女さんの顔は満面の笑みを浮かべた。

でも、いつもの笑顔よりもちょっと可愛くて、何よりキラキラしていた。


 巫女さん。

今まではちょっと喋れる唯一の知り合いって呼んでたけど……。


あなたのこと、「友達」って思ってみてもいいかな?




 私は今日。中学校で初めて「友達」ができました。





「えぇ……」

 そんないい感じになっている時。突然幽子さんの声が聞こえた。幽子さん、何だか驚きすぎて声も出ていない。

「どうゆうことよ?…」

 幽子さんは口をぽかんと開け、私の方へと目線を向けた。

それもそうだ。


 帰ってきたら自分の家が全くの別物へと変わってるんだもんな……。

そりゃ普通にびっくりするだろう。




「ほ、ほ、本当に……どうゆうことよ!!

家が変わってるじゃない!」



 その声と同時に、私たちは顔を見合わせた。

しかも、その顔はみな、真っ青だった。

もちろん私も。

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