第14話 再び
グレンの出征を見送ったあと、ジェシカは部屋で塞ぎ込んでいた。
長椅子の肘置きに頭をもたげ、涙目でため息をつく。
出征式は盛大に行われ、王子も兄も、ジェシカの元同僚も殆どが同行している。
グレンがジェシカの同行を頑なに許してくれなかったため、一人置いていかれた形だった。
遠征の行軍に自分の妃を同行させる方が非常識だとはわかっているものの、どうしてもついて行きたかった…。
「あー、見てらんないわね」
今は不在のはずの兄の声が聞こえ、ジェシカは呆然と顔を上げた。
「アンソニー?え、どうして…?王子と一緒に行ったんじゃ…え!?」
そこに居たのは、自分の衣装を着た兄だった。
しかし2〜3年前ならともかく、だいぶゴツい…。
「なんでそんなカッコ…」
「決まってるでしょ、私があなたの代わりに留守番するのよ。贅沢三昧させてもらうから」
ふふふと笑いアンソニーが言った。
「だいたい、反対してたのは王子だけよ。あなたのほうが側近としては優秀なんだから。私もカワイイ妹を戦地にやるのは気がすすまないのだけど、そんなに憔悴してる姿、見てらんないわ」
「いいの!?ほんとに!?」
ジェシカはガバッと起き上がりアンソニーの提案に歓喜した。
「言っとくけど、アンソニーとしてついていくんだからね。まあバレバレでしょうけど。王子の目に触れないように過ごしなさいよ。」
「うん、うん、ありがとう!アンソニー!」
ジェシカはアンソニーに飛びつきぎゅうっと抱きしめた。
アンソニーも優しく抱き返す。
「絶対に無事に戻って来なさいよ」
「うん」
「ドレスじゃんじゃん作っちゃうんだからね」
「それはちょっと…」
「あなた地味なのよ!早く帰らなかったら際どいラインのドレスばっかり作っちゃうから!」
場が重くならないよう、アンソニーが言ってる事はわかってる。いや、この兄ならほんとにやるだろうけど。
「約束する。きっと無事に王子と帰ってくるから」
アンソニーはジェシカに自分の衣装を渡した。
「早く着替えて行きなさい。私は忘れ物を取りに行って、出港までに追いつくと言ってるから。船に乗るまではおとなしくしておくのよ」
そう背中を押され、ジェシカは愛馬ルーフェに跨り、急ぎ出立した。
王城に初めて来た時のように、再びアンソニーとして。
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