第7話 求婚の行方

※この話には濃密な描写が含まれます


 翌日の夜、王子は勤務を終えたと執務室に報告に来たジェシカから話しかけられた。




「ご相談があります…。あとから私の部屋に来ていただけませんか?先日のお返しにお酒も用意してます」




 昨日、彼女の機嫌を損ねたばかりでどうしたものかと思案していた王子は、予想外の展開に面食らった。


 しかも、彼女の私室に呼ばれるとは……。




「えーと、わざわざ君の部屋に……?相談事なら今、ここで聞くよ?」




「いえ、ここじゃとても無理です!」




 ジェシカはすごい勢いで否定し、王子から視線を反らした。


 二人きりで会うのは気まずかったが、少し思い詰めた様子のジェシカを見て、結局承諾した。


 夕食の後に部屋に行く約束をすると、ジェシカは一礼して執務室から出ていった。




 もしかして…。


 昨日の事を思い出したのだろうか?だったら、近くに衛兵が詰めているここでは話せない事も、わからないではない…。


 だが、ただ思い出しただけなら、慌てて呼び出す必要などない。と、すると。




「断られる、のかな……」




『二人きりで話さないと、断われないだろう?』




 そう話した自分の言葉が、頭に浮かんでくる。


 昨日からの幸せな気分が、一気に突き落とされたようだった。


 だが、どんなに気が乗らなくても、約束は約束だ。


 王子は夕食を済ませると、どんよりした気分でジェシカの部屋に向かった。








「今日はお酒も飲んでませんっ。絶対に忘れませんっ。だから……昨日の、もう一度お願いします!」




 部屋に通されるなり、ジェシカは言い放った。




「ええっ…!?」




 てっきり断られるものだと思っていた王子は、面食らって、ジェシカをまじまじと見つめた。


 まさか、昨日の今日で、そんな事言い出すとは思わなかったのだ。


 せっかく仕切り直す事にしたのだから、今度はジェシカを失望させないよう、色々と考えるつもりだったのに。


 ここで、もう一度?




「昨日の事、思い出したの?」




「はい」




 ジェシカは、顔を赤らめながら頷いた。




「断片的にですけど、何があったかは思い出しました。だから覚悟を決めました」




 思い詰めた様子で、ジェシカは王子に訴えた。断られるよりは遥かにいいが…。




「参ったな。それって、でも、ホントに今?…いいの?」




「いいんです!」




「困ったなぁ。まだ、準備も何も無いんだけど…」




「何の準備ですか…」




「いやあの、プロセスというか……心の?」




「何を今更」




「いやでも、今ってまたムードも何も無いんじゃない??そんな果たし合いみたいに…」




「いいんですっ。こうしないと気合いが持ちません!」




「昨日と言ってる事が違うなぁ…どっちが本音なの?」




 何を言っても引かないジェシカに、王子は観念した。仕方がない。


 ここまで言うなら、もう一度言ってみよう。


 クスクス笑いながら、ジェシカの頬にそっと手を添えると、ジェシカはぴくっと身をすくめた。




「君は、ホントに面白いね」




 ムードがない求婚はあんまりだ、と泣き崩れたかと思えば、ムードぶち壊しの勢いで、もう一度お願いしたいと言う。




「それじゃあ、もう一度言うよ?」




 なんにも準備は出来ていないけれど、せめて気持ちだけは精一杯込め、告げる。




「ずっと側にいて欲しい。側近としてじゃなく。僕の妃になってくれる?君の事が好きだから…」




 しかし…。




「はい?」




 たっぷりとした間を置いたあと、ジェシカは疑問符付きで答えた。


 ポカンと王子を見つめるジェシカに、王子は困惑する。




「え、ええええ!?」




「…思い出した訳じゃ、なかった?」




 王子はジェシカの頬から手を離し、苦笑しながら天井を仰ぎ見た。




 失敗した…。またもや失敗してしまった。


 なら、もう一度とは何のことだったのか。




「いえ、待って下さい…そういえば…」




 自己嫌悪に落ちる王子をよそに、ジェシカは呟いた。




「そういえばって…酷いな」




「…父から来てる縁談が、この事……って」




「そうそう」




「私は、酔っ払っている時にこんな話は、あんまりだって……」




 どうやらしっかりと思い出したようだ。




「はは……言ってたね」




 おそらく、その後のグダグタも思い出したのだろう。


 ジェシカは頭を抱え込んで、真っ赤になって狼狽えていた。




「すみません…。私、いろいろ勘違いして…」




「勘違いって?あとは…」




 求婚以外にした事と言えば…気持ちを抑えられず、口づけをしたことだろうか。




「ああ」




 王子はようやく、ジェシカが何をしてほしかったのか察した。それはちょっと、いや、かなり嬉しいかもしれない。




「ジェシカ?返事は?」




 そうは言っても、求婚したことには変わりない。


 気を取り直し、王子はジェシカに聞く。


 ちゃんと返事を聞きたい。




「…こんなバカな自分にお話しを受ける資格なんて…」




 ところが、ジェシカはあろうことか、及び腰になっている…。




「おいおい、言わせておいてそれはないなぁ」 




 王子はからかうような口調で返すが、内心焦っていた。




「だって、まさかこんな話だったなんて…」




「僕の事、嫌い?」




 ここで断られたら、元も子もない。




「そんな事…」




「酔ってた君のほうが、素直だったよ?」




 そうだ。大好きな相手だと、言ってくれていたではないか。




「…っ!意地悪言わないでください!」




「僕は、君がいいんだよ」




 絶対に、逃さない。




「………!」




 怯むジェシカに、王子はグイグイ押していった。もう逃がすつもりなど微塵も無かったし、後戻りもできなかった。


 王子は笑みを浮かべていたが、内心、全く余裕を無くしていた。




「ジェシカ」




 王子は、またジェシカの頬に手を添える。


 ジェシカは息を飲んだ。




「……あの…王子、ちょっと?」




 しどろもどろ、ジェシカは呟く。




「いったい、何を勘違いしたんだい?あんなに気合い入れて」




「………!それ、は…」




 ジェシカは真っ赤になり、口を押さえた。


 やっぱりそっちか。


 いや、覚悟を決めたって言うのは…。ジェシカが怯えているふうだったから、この前はそれ以上は踏み留まったのだ。だが…。




「返事は、また今度聞かせてもらうよ。さすがに妃と言ったら考えるよね。それまで、僕も、勘違いに便乗させてもらおうかな?」




 王子はジェシカの手をとり、顔を上に向かせた。


 そうだ。せっかくの機会、ものにしなくてどうする。




「ちょっ、王子…!」




 おおいかぶさるように、顔を近づけ唇を塞ぐ。柔らかい唇に触れた途端、理性が吹き飛びジェシカを強く抱きしめた。夢中になって深い口づけを何度も繰り返す。




「ん…っん」




 ジェシカから声が、吐息がもれ、王子はますます歯止めが効かなくなる。


 王子の唇はそのまま首筋のほうにはい、手はゆっくり背中をなぞっていった。




「ふ…っ」




 ジェシカが膝から床に崩れ落ちたため、王子は追いかけるようにその場に膝をつく。




 そのまま、王子はジェシカに覆い被さり、床の上にゆっくり押し倒した。


 王子の手は止まる事なく、ジェシカの衣服の裾から中に忍び寄った。


 柔らかく温かい人肌に触れると、ジェシカがビクッと身をすくめ、その手を押しのけた。




「や…っ」




 ジェシカの小さな叫び声に、王子はハッと我に返り、動きを止めた。


 見ると、ジェシカは半泣きになって、こちらを見上げていた。


 まずい、やりすぎた…。


 欲情した気持ちを抑えられず、口づけ以上の事をするところだった。


 王子はジェシカの額の髪をかきあげる。




「ごめん、調子にのりすぎたね」




 王子は興奮した気持ちを宥めながら、ジェシカに声をかけた。


 怖がらせるつもりはなかったが、歯止めが効かなくなるところだった。


 安心したのか、ジェシカはホっと一息ついた。




「すみません…こういう事、慣れてない…というかまったく勝手が…」




 ジェシカがそう呟くと、王子は苦笑した。


 慣れていてたまるか。




「…そりゃ、そうだろうね。嫌なときは言って良いよ。無理強いをするつもりはないから」




 危なく突き進んでしまうところだったが、そこは伏せておく。




「…嫌って訳じゃ…ありません」




 理性を呼び起こし自制する王子に、ジェシカは答えた。


 何を、強がっているのか。




「そう?イヤって言ってたよ?」




 それで踏みとどまったのだから。




「だから勝手がわからなくてつい…。それに…」




 ジェシカが言いにくそうにうつむいたため、王子は優しく聞き返した。




「…それに?」




「ゆ…床の上、じゃ……」




 一瞬、王子は頭が真っ白になった。


 だが、ジェシカが嫌がってるのではない事を理解すると、自然と笑みが浮かんだ。


 確かに、どこに押し倒してるのか。どれだけ余裕が無いんだ。




「あー…、ごめん。それじゃあ…」




 王子は立ち上がると、ジェシカを抱き上げた。




「!!!」




「寝室、行こうか?」




「え?あの?お、王子!」




 王子はジェシカの寝室に入るとベッドにジェシカをおろして、自分も横に座った。




 王子はジェシカの頬に手を添え、熱心に見つめると、少しバツが悪そうに呟く。




「……今更だけど、いい、かな?もうこれ以上、途中で止めるのは無理そうだ」




 ここに来るときは、断られるのかと暗い気持ちで来たのに、まさかの展開だった。    


 だが、もう止められない。


 ジェシカは、緊張した表情でゆっくり頷いた。


 王子の心臓は歓喜に踊る。




「愛してるよ…」




 王子はそう囁くと、ジェシカの頬を引き寄せ、唇を重ねた。










 目を覚ますと辺りはまだ暗かった。




 覚醒したての頭はぼんやりしていて、上手く働かない。




 気だるさが全身を被い、身体の節々が痛むのが不思議だった。




 なんだか温かいなぁと、寝返りをうったジェシカの目に飛び込んできたのは、柔らかでクセの無い銀色の髪だった…。




 3秒ほど見つめた後に、再び眠りに落ちそうになったジェシカの頭が急に冴えわたった。


 王子!


 ジェシカの横には、王子が眠っていた。


 ここは自分の部屋だ。それは間違いない。




「な、何で?」




 身を起こしたジェシカは、自分が何も着ていない事に気がつき、慌てて毛布で身体を隠した。




「…っ!?」




 辺りを見回すと、自分の服は寝台の下に散らばっていた。…王子の服と折り重なるように。




 …徐々に、ここに至った顛末を思い出してきた。




「~っ!!!」




 一つ思い出すたびに、顔から火が出るようだ。




 生々しく思い出してしまい、身体の奥がしびれるように熱をおび、息苦しい。




 一連の出来事はまるで嵐のようだった。 


 自分は翻弄されるばかりで、ただしがみついて嵐が過ぎ去るのを、待つことしかできなかった。


 当の王子はスヤスヤ寝息を立てて寝ていた。


 いつものように大人びた表情ではなく、少し幼さすら見える、2つ年下の少年そのものだった。


 その顔を見ていると、ずいぶん腹立たしくなった。


 この唇が触れるたびに、どれほど翻弄された事か。


 ジェシカはその思いとは裏腹に、吸い寄せられるように王子の唇を指でなぞった。




「う…ん…。」




 王子がかすかに身じろぎすると、ジェシカは我にかえって身を起こした。




「…っ」




 自分は今、何をした?


 恥ずかしさに顔を真っ赤にし、ジェシカは口元を押さえた。


 とにかく、いつまでもこんな格好でいるわけにはいかない。


 何かをごまかすように、ジェシカは思った。


 しかし、そのままの姿で寝台を降りるのは非常に気恥ずかったので、何とか手を伸ばして落ちている服を拾おうとした。


 が、なかなか手が届かず身を乗り出すような格好になる。




「もう…少し…」




 指先が、プルプル震えている。


 ようやく服の端を掴めた。


 が、無理な体勢だったためか、途端に寝台から転げ落ちそうになった。




「うわっ…わっ!」




 その時…。




「危ない!」


 


 背後から毛布ごと抱きすくめられた。


 だが、背中に触れているのは素肌の感触だった。




 拾った服は、また元の位置に落としてしまった。




 …………。




 気まず過ぎて振り返れない。




「大丈夫?」




 そんなジェシカの気も知らず、王子は耳元で囁いた。




「は…い…」




 絞りだすように返事をしたものの、それから先が続かない。




「僕も寝ちゃってたんだね。」




「………」




 言葉が…出てこない。




「ジェシカ?こっち向いて?」




 王子の指先が、ジェシカの顎をそっとなぞる。




 ジェシカはピクリと身を縮めた。




 だが、顔をあげる事はできなかった。恥ずかしくて、恥ずかしくて、消えてしまいたい。




「……ごめん。もしかしていやだったの?」




 王子は不安げに聞いてきた。


 嫌?そうではない。


 ジェシカは小さく首を横に振った。


 だがもう、ひたすら、恥ずかしい。




「…どんな顔をしていいか…わからない、から…」




 絞りだすようにそれだけ言うと、またうつむいてしまった。




「そっか、そうだね」




 安堵の気配が背中越しに伝わってくる。


 しかし、絡めた手はそのままだ。


 早く離してくれないと、どうにかなってしまいそうだった。




「あの…」




「ん?」




「服を着ます…。向こう向いててもらえませんか?」




「…もう散々見ちゃったよ?」




 くすくす笑いながら、王子はまだ手を離してくれない。




「~~!勘弁して下さい…」




 散々?


 想像するだけで、泣きそうだ。


 王子は、存外意地悪な性格のようだ。




「ねぇ、こっち向いて」




「嫌です」




 こうなると、意地でも顔を上げたくない。


 すると、王子はジェシカの首筋に顔をうずめた。




「なっ!!…あ…」




 意地になるジェシカに、王子もイタズラ心を起こしたのか、ゆっくり、ゆっくり、触れるか触れないかの微妙さで、唇を這わす。




「~~~~!」




 息を詰め、ジェシカは感触に耐える。


 それを楽しむように、王子はくすくす笑う。




「こっち向いて。向いてくれるまで止めないよ?」




「い…やです…」




「じゃあいいよ」




 突然、王子がジェシカの腕を引っ張った。


 ジェシカはバランスを崩してベッドに仰向けに倒れる。




「うわあ!なにするんですか!」




 反射的に見上げると、そこには王子の顔があった。…見てしまった。


 これはまた、押し倒された格好だった。




「王子って、こんなに意地悪な方だったんですね…」




 結局、王子に従った格好のジェシカは、すねるようにそっぽを向いた。




「そうだよ。みんな知らないだけさ。でも意地悪なのは君だろう?僕はまだ君から何も聞いてないんだけどな」




「え…」




「ねぇ、ジェシカ、……」




 耳元で、甘い言葉が囁かれる…。


 そして…また。


 抱き寄せられる身体。背中をさまよう指。


 そのぬくもりに高まる気持ち。


 顔は相変わらず見れない。だけど…。


 王子の首に腕を絡め、精一杯の気持ちを込めて耳元で小さく呟く、言葉。




「……す」




 聞こえただろうか。


 あとは言葉ではなく、腕に気持ちを込める。


 王子は答えるように抱擁を返した。


 温かくて、気持ちいい…。


 ただ翻弄されてばかりだった先程とは違い、温かい安らぎで満たされるようだった。


 このまま…眠ってしまえたらどんなに幸せだろう。


 だが、それは王子が許してくれなかった。




「う~ん、どうしよう…」




「どう…したんです?」




 半分、まどろみかけていたジェシカは我にかえって問い返した。


 王子は、やや潤んだ瞳でしばらくジェシカを見つめると、いたずらっぽく答えた。




「我慢できそうにないや。もう一度、良い?」




「何を…?…!ん、んん~!」




 王子に唇を塞がれ、少し遅れてその意味を理解する。




「そんな、ま…た?」




「駄目?」




 王子の吐息はすでに熱い。




「だって、すごく痛かった……」




「痛いだけだった?」




 ためらうジェシカに王子が尋ねる。よく、覚えていない。


 思い出せるのは痛みと、熱、身体を突き抜ける感情。


 それが、また?




「それは…でも…」




「今度は、優しくするから…。」




 ジェシカは、結局夜明け近くまで眠らせてもらえなかった…。








 次に目を覚ましたときには、王子はもう部屋にいなかった。




 自分の服は、チェストの上にきちんとたたんで置いてある。


 王子がたたんだのだろうか?何てマメな…。


 辺りは薄暗いが、もうじき夜明けだろうか?


 ジェシカは気だるさを振り払うように頭を振り、服に手を伸ばした。




「いたた…」




 足腰が壮絶に痛む。情けないが筋肉痛のようだ。


 見ると、シーツには血痕があった。


 ため息と共に複雑な思いでそれを見やったが、もう考えないようにした。


 ふと、聞き流していたアンソニーの言葉を思い出す。




「いくらなんでも、やっちゃったら分かるわよねぇ」




 こういう、事か。


 何故分かる…。


 戯れに遊ぶ相手はたくさんいるようなので、その経験からか。


 王子も…。


 あの手慣れた様子では、今まで相当経験があるのだろうと思うと、少し悲しくなった。


 その時、ぐうぅっとお腹がなった。


 こんな時にも空腹を感じる自分は以外に図太いのだなと、失笑する。




「よっぽど消耗したのかなぁ?」




 一度空腹を感じると、急に何か食べたくて仕方がなくなった。


 こんな朝早くに、厨房で何か食べるものがあるだろうか?


 パンや干し肉ぐらいはあるだろうから、その辺をつまめば良いか。


 そんな事を考えながら、厨房に向かおうと部屋を出た途端、違和感を覚えた。


 廊下には光々と灯かりがともされている。


 しかもさっきより暗くなってきている。


 その時…。




「あら、ジェス。貴方結局、1日中寝てたのね」




 振り返ると王子付き女官のキャロルが呆れ顔でこちらを見ていた。


 と、言うことは、やはりもう夕方なのか?


 それはおなかも減るはずだ。


 こんなに眠りこけるなんて…




「殿下と明け方まで飲んでたんでしょう?起きるまでそっとしておくよう、おっしゃっていたわ。食事は残っているわよ」




キャロルは厨房に行くよう、促した。




「…王子は、もう起きてるの?」




「いいえ、逆よ。急ぎの書類にだけ目を通して、さっきお休みになったわ」




「そうか…」




「あら、首のところ、赤くなっているわよ。虫に刺された?」




「?痒くはないけど…」




「じゃあ、キスマーク??やあねぇ、見えないところにつけるよう、相手に言っておきなさい」




「えっ!?」




 そういえば、首に何度も…。


 慌てて首筋を押さえ赤面するジェシカに、キャロルは目を丸くした。




「やだ、冗談よ。何よ図星なの!?」




「そんなわけ、ないじゃないか…」




 まじまじとのぞき込むキャロルに、ジェシカは目を合わせる事ができない。


 キャロルはにやりと笑った。




「ふーん、そういう事かぁ。みんなこの事知ったらびっくりするだろうなぁ」




「ちょ、ちょっと…!」




「あら、なんでもないなら堂々としてなさいよ。でも、口止めしたいなら正直に言わないと、ねぇ?」




「ううう…っ」




「だいたい、いつまで男の格好してるつもりなの?私の仲間うちでも知らない子たくさんいるのよ?」




 そう、キャロルは幼なじみなので、王城に上がった当初から、色々サポートしてもらっていた。


 しかしその分、容赦なかった。




「で?いつからそんな事になった訳?」




「………昨日、いきなり…」




 ジェシカは観念して、白状した。


 だが恥ずかし過ぎて、またもや涙目になっている。




「やだ。いきなりって、無理矢理?」




 キャロルは何を勘違いしたか、さっと表情をこわばらせた。




「無理矢理じゃないけど…押し切られたような…」




「まあぁ!何よそれ!酷いわ!詳しく話しなさい!」




「えええ!?勘弁してよ…」




「ここじゃなんだから…貴方の部屋でゆっくり話しましょう。そうだ、食事も持って行ってあげるから!」




 キャロルは喜々として、畳みかけた。






 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る