哀歌(詩歌抄)

横井 志麻

第1話 さくら

さくら


春の名残りに葉桜を思う

十日前の世界に

艶やかに咲いた

桜の花を思う


秋の終わりに葉桜を思う

木陰を作った盛葉は

今は色づき

あるいは虫に食われ

病葉がちになって


その花が散るように

その葉が落ちるように

過ぎたものを振り捨てて

次の季節を迎えるのはさいわいか?


年を経

重みに耐え

ひび割れ

瘡蓋を作り

黒ずんだ幹を持つ私は考える


歳ふりてなお

梢であることはさいわいか?

(2025.10.11.雨)

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