第24話 看病って、どうやるんだ? #8-6

入学式の翌日。

まだ日も昇りきらぬ時間、学生会室で机の上に山積みになった書類をめくっていたエレン会長は、深刻な顔で呟いた。


「……今年の新入生のうち、公式にマダムと接触した割合は2.8%。……非公式を含めると100%。」


もう一枚、書類をめくる。


【保健室 異常症状報告書】

【スノハ:イチゴの反復発話、特定感覚への過剰反応、ケーキ幻視】


「……ふぅ。」


【寮記録】

【アゼル:夜間活動頻度高め、気絶後の自力帰還経路不明、看病中に過労で搬送歴あり】


「……ふぅぅ。」


【オカルト部 活動初期報告】

【特異点発生:幻影波動検知、逆回転する時計、『死んだと思ったら生きていた』という回帰発言】


「……ふぅぅぅ。」


ひと息つきながら、茶を口に運ぶ。

その横には、赤いハンカチが置かれていた。

校長の印が押され、見覚えのある赤い文字が大きく書かれている。


『出ていけ』


「……はぁ……今年もこの色か。」


エレンは眉をひそめ——

ふっ……「へくしっ!」

くしゃみ。いや、咳か。

書類のホコリのせいだろう。

……それとも、イチゴアレルギーか?


「今年のカラーは、間違いなく……赤だな。」


その瞬間、廊下の方から声が響いた。


「ウサギ型イチゴ二段ケーキ、誰が盗ったんですか!!」

「だからそれ、スノハにあげたって言ってるでしょうが!!」

「まだ入学すらしてないのに、なんで持ち主面してるんですか!!」


エレンは静かに頭を抱えた。


「……始まったな。」


今年も魔法学校は、平穏とは無縁だ。

そして赤は、生き残った者たちの色だった。


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