第6話 第四章 初めての特別なデート

第四章 初めての特別なデート


土曜日の朝、陽翔は少し早めに家を出た。

「今日は……特別な日だから、遅れたくない」

胸の奥がそわそわと高鳴る。


待ち合わせ場所には、すでに湊が笑顔で立っていた。

「おはよう、陽翔!今日、めいっぱい楽しもうな」

陽翔は頬を赤くしながら、元気にうなずく。


二人は市内の小さな遊園地へ向かった。

観覧車の前で湊が言った。

「せっかくだから、一番高いところから景色を見ようぜ」


観覧車のゴンドラに乗り込み、ゆっくりと空へ昇る。

下に広がる町並みと夕陽に、二人は無言で見入る。

「……きれいだな」

「うん……」

手をつなぐ勇気が湧き、自然と二人の指が絡む。


観覧車が頂上に達した瞬間、湊がそっと耳元で囁く。

「陽翔……やっぱり、俺はお前といる時間が一番幸せだ」

陽翔は心臓が飛び出しそうになりながらも、しっかりと湊の手を握り返す。

「僕も……湊と一緒が、一番……」


観覧車を降りたあとは、二人でゲームコーナーやお化け屋敷、アイスクリーム屋さんを巡る。

湊が陽翔の手を引いて楽しそうに走るたび、陽翔の胸はドキドキして止まらなかった。


最後にベンチに座り、二人で夕陽を眺める。

「今日は……本当に楽しかったな」

「うん……最高の一日だった」

小さな声で答える陽翔に、湊は微笑んで頭をぽんと撫でた。


――二人だけの特別な日。

甘くて、ほのぼのとして、確かに心に残る日。

陽翔は胸の中でそっと呟いた。

「ずっと、湊と一緒にいたい……」


その気持ちは、もう言葉にしなくても、二人の間で確かに伝わっていた。

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