第19話「古代遺跡の死闘」
海辺にそびえ立つ古代遺跡は、不気味なほどの静寂と、濃密な魔力に満ちていた。かつて古代人が祭祀を行っていたというその場所は、今は魔女にとって最高の舞台となっていた。
遺跡の中心部で、叔父と魔女はレオニールたちを待ち構えていた。
「来たか、愚かな甥よ!その人魚さえいなければ、私の計画は完璧だったものを!」
叔父は、憎悪に満ちた目でレオニールを睨みつけた。
「あなたの野望は、ここで終わりです」
レオニールは静かに剣を抜き、近衛騎士団に突撃を命じる。同時に、シオンの兄が率いる人魚部隊も、海から遺跡に上陸し、叔父の私兵たちに襲いかかった。遺跡は、たちまち激しい戦場と化した。
レオニールは、混乱の中を一直線に叔父へと向かう。しかし、その前に魔女が立ちはだかった。
「王子様の相手は、この私だよ!」
魔女は哄笑し、遺跡の魔力を吸収して強力な魔法を次々と繰り出す。レオニールはそれを剣で捌きながら、必死に応戦する。
一方、シオンは戦場の中心で、歌い始めていた。
その「破邪の歌声」は、味方の兵士たちの傷を癒し、士気を高める。そして、魔女が作り出す邪悪な魔力を中和し、弱体化させていた。戦況は、明らかにレオニールたちに有利に傾き始めていた。
「小賢しい歌声だねぇ…!」
魔女は、忌々しげにシオンを睨みつけた。彼女は、シオンの歌を直接封じるための、とっておきの呪術を用意していた。
魔女が呪文を唱えると、遺跡の石畳に描かれた古代の魔法陣が禍々しい光を放ち始めた。それは、聖なる力を打ち消すための、古代の呪いの魔法陣だった。
「シオン、歌うのをやめろ!」
レオニールが叫ぶ。
しかし、シオンは歌うのをやめなかった。この歌声が、レオニールの呪いを完全に解く唯一の希望だと信じていたからだ。彼は、自分の力のすべてを振り絞り、レオニールの呪いを破壊するためだけに、歌声の力を集中させた。
シオンの歌声が、レオニールの魂を縛る呪いの鎖に直接働きかける。鎖が、ミシミシと音を立てて砕け散ろうとした、その瞬間だった。
魔女の妨害呪術が発動し、シオンの聖なる力と激しく衝突した。
力が相殺された反動で、レオニールは凄まじい苦痛に襲われた。
「ぐ…あぁぁぁぁっ!!」
呪いが完全に解ける寸前で妨害されたため、彼の頭の中では、これまで以上の、地獄のような雑音が暴れ狂った。それは、魂そのものが引き裂かれるような、耐え難い苦痛だった。
レオニールはその場に崩れ落ち、頭を抱えてのたうち回る。
「レオ!」
シオンの悲痛な叫びが、戦場に響き渡った。
その一瞬の隙を、魔女は見逃さなかった。
「終わりだよ、王子様!」
魔女の手のひらに、レオニールの命を奪うための、最大級の破壊魔法が形成されていく。絶体絶命。シオンの目に、涙が溢れた。
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