第17話「白日の下に晒される黒い野望」
シオンの兄という強力な味方を得たレオニールは、すぐに行動を開始した。兄からもたらされた海の情報と、レオニールの隠密部隊が集めた陸の情報を組み合わせることで、叔父の陰謀の全貌が、恐ろしいほど鮮明に浮かび上がってきたのだ。
叔父は、レオニールを失脚させるために雇った魔女から、偶然にもシオンの「破邪の歌声」の存在を知った。眠り病は、シオンの力を確かめるための実験だったのだ。そして、その力が本物であると確信した叔父は、恐るべき計画を企てていた。
シオンを捕らえ、その歌声を国の軍事力として利用する。
歌によって兵士の士気を高め、傷を癒し、さらには敵国の魔術師部隊を無力化する。その圧倒的な力をもって近隣諸国を征服し、大陸に覇を唱える。それが、叔父の抱く邪悪な野望だった。
「やはり、シオンの力が目的だったか…」
レオニールは、調査報告書を握りしめ、静かな怒りに身を震わせた。
さらに、叔父が、人魚族の野心家一派と裏で手を組んでいたという衝撃の事実まで発覚した。叔父はシオンの身柄を確保する見返りに、海の国に大陸の港湾都市をいくつか割譲するという密約を交わしていたのだ。陸と海の平和を、自らの野望のために売り渡そうとしていたのである。
もはや、一刻の猶予もなかった。
レオニールは、父である国王の元へ赴き、すべての証拠を提示した。国王は、信じていた弟の裏切りに深く打ちのめされたが、息子の言葉と確固たる証拠を前に、苦渋の決断を下す。
「叔父上を、国家反逆罪で拘束する」
王の命令が下り、王宮は騒然となった。レオニールは自ら近衛騎士団を率いて、叔父である公爵の屋敷を包囲した。
「レオニール!何の真似だ、これは!」
屋敷から出てきた叔父は、あくまでも無実を装い、甥を怒鳴りつけた。
「叔父上。あなたの野望も、ここまでです」
レオニールは、冷徹な声で言い放つと、次々と動かぬ証拠を突きつけた。魔女との金のやり取りを記録した帳簿、海の野心家との密約書。叔父の顔は、みるみるうちに青ざめていった。
「お、おのれ…!こうなれば、力づくでも…!」
追い詰められた叔父が叫んだ、その時だった。屋敷の影から、あの魔女が姿を現した。叔父は、最後の切り札として彼女を屋敷に匿っていたのだ。
「王子様、残念だったね。計画はまだ終わっちゃいないよ!」
魔女は不気味に笑うと、強力な転移魔法を発動させた。激しい光が辺りを包み、光が消えた時、そこには叔父と魔女の姿は既になかった。
二人は逃げたのだ。決戦の地へ。
レオニールは、彼らが向かった先に心当たりがあった。この国の沿岸にある、古代の遺跡。そこは、魔力が集中する場所として知られており、魔女が力を最大限に発揮できる場所だった。
すべての陰謀は白日の下に晒された。
残すは、黒幕との最後の対決。レオニールは、古代遺跡の方角を睨みつけ、固く決意を誓う。
必ず、二人を捕らえ、そしてシオンと、この国の未来を守り抜く、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。