第15話「嵐のあとの愛の告白」

 シオンが次に目を覚ました時、彼は離宮の寝台の上に横たわっていた。窓からは朝の柔らかな光が差し込み、小鳥のさえずりが聞こえる。そして、すぐそばには、心配そうな顔で自分を見つめるレオニールの姿があった。


「レオ…?」

 掠れた声で呼びかけると、レオニールは安堵の表情を浮かべ、シオンの手を優しく、しかし力強く握りしめた。彼の肩や脇腹にあったはずの深い傷は、跡形もなく消えている。


「君が…助けてくれたんだな」

 レオニールの声はまだ完全ではなかったが、昨日よりもずっとはっきりとしていた。シオンの魂の歌が、彼の体を癒したのだ。


「よかった…レオが、無事で…」

 シオンの瞳から、安堵の涙がほろりとこぼれ落ちた。その涙を、レオニールは優しい指先でそっと拭う。


 そして、レオニールは、傷が癒えたばかりの体でシオンを強く抱きしめた。その腕の力は、彼がどれほどシオンを失うことを恐れていたかを物語っていた。


「シオン…愛している」


 熱い吐息と共に、レオニールの唇がシオンの耳元で囁いた。

「君なしでは、もう生きていけない。私の世界には、君が必要だ。君の歌声も、君の笑顔も、君の涙も、すべてが私の宝物だ。どうか、永遠に私のそばにいてほしい」


 それは、レオニールが心の底から絞り出した、初めての熱烈な愛の告白だった。呪われた王子が、初めて自分の声で、自分の言葉で伝えた愛。


 その真っ直ぐな想いを受け止め、シオンの心は喜びで満たされた。忌み嫌われ、孤独だった自分を、こんなにも愛してくれる人がいる。必要としてくれる人がいる。


「僕も…僕も、レオを愛してる…」

 シオンもまた、涙ながらにレオニールへの愛を告白した。

「レオが僕を見つけてくれたから、僕は自分のことが好きになれた。僕の居場所は、レオのそばだけだよ」


 想いが通じ合った二人は、どちらからともなく顔を寄せ、唇を重ねた。

 それは、以前の夕暮れのキスとは違う、互いの魂の繋がりを確認しあうような、深く、そして熱いキスだった。

 もう、何も恐れることはない。この人がいれば、どんな困難も乗り越えていける。


 長いキスの後、二人は額を寄せ合ったまま、互いの温もりを感じていた。

 戦いのあとの、甘く、そして穏やかな時間。

 しかし、魔女を退けたとはいえ、すべての問題が解決したわけではない。黒幕である叔父は、まだ王宮でのうのうと暮らしている。そして、海からの脅威も去ったわけではなかった。


 だが今の二人には、共に戦うという強い意志があった。

 この幸せを、誰にも壊させはしない。その誓いを胸に、二人は互いの瞳を見つめ合い、静かに微笑みあうのだった。

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