くまのお人形さん
夕日ゆうや
第1話 クマ愛好家の人々がクマに襲われる物語り。
「わあああ。クマのお人形さんだー」
わたし、
九歳の誕生日に飛びっきり大きなクマのお人形さんをプレゼントしてくれた。
それはもう飛び上がるほど喜んだものだ。
それからしばらくして、大人になったわたしは某県でクマの狩猟が行われていると知った。
かなりショックだった。
クマが殺されるのをみんな笑ってみている。
その不愉快さがわたしには許せなかった。
だからクマ愛好家を集め、国に訴えた。
「このままではあまりにもクマが可哀想です。人間の都合ばかり考えて!」
それがわたしの主張だった。
「けど、クマに襲われている人は年々増えているのです。こちらも防衛しなくては!」
政治家の言いそうな言葉ではあった。
わたしはそのふざけた理由を言う輩が嫌いだ。
民衆の意見を取り入れるべき。
そう思ったわたしは実態調査を行った。
そりゃクマに襲われた人もいるけど。
でもそんなの理由にならない。
だって勝手に自然を壊しているのは人間だもの。
好き勝手言っているのはどっちって話。
哀れな奴ら。
「国会にクマ保護法が通ったってよぉ!!」
仲間の
わたしも一緒になって喜ぶ。
これからは大好きなクマを守ることができる。
猟友会のバカどもに手を出させずにすむ。自衛隊や警察だってそうだ。
これでクマが報われる。
わたしたちは祝賀会としてクマが多く生息する森の洋館に集まる。
ビール、ワイン、チーズ、ステーキ。
様々な料理やアルコールがところ狭しと机の上に乗る。
わたしは心置きなくその料理に舌鼓をうつ。
「まあ、わたしはクマが世界を救うと思っているのですよ」
「これをモデルケースにして世界中のクマを救いましょう!」
「クマはクマでクマなのですよ」
優雅な一時を楽しむと、わたしは寝間着に着替え、温泉から自室へ向かう。
自室のドアを開き、自然と閉まるのを待つ。
きぃ。
ドン。
ドアが閉まると何かの視線を感じる。
「え」
後ろにいたのは……。
「クマ?」
そう愛すべきクマなのだ。
「クマさん! やっと会えたわ!」
ぐちゃ。
《大クマ洋館にて、惨殺事件が起きました。クマ一頭による関係者の惨殺。これは許されざる行為です》
レポーターがドローンによる映像とともに流れる。
ハンターたちが結集し、近くのクマを駆除にかかった。
この流れにより、クマは絶滅することとなった。
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