輝きをえるもの
焦げたマシュマロ愛好家
#1 始まり
晴天のサバンナの空の下、広大な草原にひっそりと生える一本のアカシアの木の木陰に一つの人影があった。
「ねーねー!コン!?それで!?続きは!?」
「あぁ、カコは俺の折れたナイフをわざわざ……」
その人物は荷物を背もたれにして寝転がりながら、オフロードバイクの隣で一人のフレンズと談笑していた。
乾いた涼しいサバンナの風が彼のブーニーハットを少し浮かせたその時、木の根っこの上に置いてある無線機が信号を受信する。
『管理センターより、サバンナパトロールへ一方送信です。現在エリア37に中型セルリアンが出現しています』
通信を聞くと、ゆっくりと体勢を起こし、帽子を被り直す。
『パトロール中に発見しても無闇に近づかず、必ず管理センターへ────』
最後まで言い終える前に、無線機の電源をプツン切ってしまい、無線機を手に取ってからゆっくりと立ち上がる。
「悪いな、続きはまた今度で良いか?」
「えー! もっと聞きたいー!」
駄々をこねるそのフレンズを笑顔でなだめながら、彼は枕兼背もたれにしていた荷物を持ち上げて、バイクに積み込み始める。
「次はいつパトロールしに来るの?」
「そうだな......」
荷物を積む手を少し止めて、枝と葉に遮られるも微かに望むことができる青空を見上げながら少しの間を置くと
「すぐ戻るさ」
とだけ呟く。
「絶対続き聞かせてね! 約束だよ!」
「おう、またな」
彼はそう言うと、ゴーグルをつけてバイクをゆっくりと加速させ、サバンナの草原を駆け始める。
しばらく草原でバイクを走らせると、腰の無線の周波数を変更して、無線機の発信ボタンを押しながら話し始める。
「周波数変更完了、遅れて済まない」
『遅い! 何かあったか心配したじゃん!』
「悪い、ちょっとアニマルガールと話しててな」
『程々にな、何はともあれこれで全員揃ったな』
「恐らく一番近いのは俺だ、現在キョウシュウのエリア34、他はどうだ?」
『さっきまで話してたが、すぐには向えなさそうだ』
「何? 今日のサバンナパトロールの中には他にも”仲間”が居たはずじゃ……」
『そいつがついさっき派手に事故っちゃってね、今処置中』
「なるほど......」
彼はそう呟くと同時に見晴らしの良い小高いサバンナの丘の上でバイクを止めると腰のポーチから単眼鏡を取り出して、覗き込むと、サバンナの景色の中で明らかに浮いている黒色の個体を発見する。
「あれは......ファングセルか」
そう呟くと同時に腰から無線機を手に取ると、通話ボタンを押して無線機に向かって話し始める。
『対象を目視で確認した、ファングセルと取り巻きのシビレが2匹だ』
車載無線機から流れる彼の声に思わず手当を止めて車載無線のマイクを引っ張る。
「ちょっと! 一人でやるつもり!?」
『応答しなさいッ! コン!』
耳につけていた、彼女の大声を放つ通信機の電源を切ると、コンと呼ばれたその人物は腰のベルトに括り付けていたラジカセの再生ボタンを押す。
程なくして、軽快な音楽が流れ始めると前奏が終わると共にセルリアン達を目掛けてバイクは坂道へ急発進する。
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